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第75回【具体と抽象】「話が通じない」の正体|具体と抽象を行き来する思考のしくみ

【具体と抽象】「話が通じない」の正体 自己分析・自己成長
もんとり
もんとり

「あの人、話が噛み合わないな」と感じたこと、ありませんか。あるいは「もっと具体的に言って」「要するに何が言いたいの?」と言われて、うまく説明できなかった経験はないでしょうか。

 

こうした「話が通じない」現象の多くは、実は「具体」と「抽象」という2つの階層のズレから生まれています。片方が具体的な例を話しているのに、もう片方は抽象的な原則の話をしている——お互い真剣なのに、見ている階層が違うために噛み合わないのです。

 

細谷功さんの『具体と抽象』は、この2つの世界を行き来する思考の仕組みを解き明かした一冊です。薄くて読みやすいのに、読み終わると世界の見え方が変わる。「頭がいい人は何をしているのか」の正体を、これほど明快に説明してくれる本はなかなかありません。

こんな人に読んでほしい

・「話が噛み合わない」「うまく説明できない」ともどかしさを感じることが多い人

・応用力を身につけたい、一を聞いて十を知る力がほしい人

・物事の本質を見抜き、より深く考えられるようになりたい人

やってみよう!

① 今日見聞きした具体的な出来事をひとつ選ぶ。(ニュース・仕事のトラブルなど)

② 「これはつまり、どういうことか?」と一段抽象化してまとめてみる。(「要するに◯◯という問題」)

③ 抽象化したその原則が、他のどんな場面に当てはまるかを考えてみる。

④ 逆に、抽象的な話を聞いたときは「たとえばどういうこと?」と具体例に落とす練習をする。

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1.ポイント:世界の見え方が変わる——具体と抽象の思考法5つの視点

(1)「具体」と「抽象」とは何か——思考の2つの階層

まず、この2つの言葉を整理しておきましょう。

具体:目に見える、個別の、実際の事象。「このリンゴ」「昨日の会議」「あの人の発言」など。
【具体と抽象】「話が通じない」の正体01
抽象:複数の具体から共通点を抜き出し、まとめたもの。「果物」「コミュニケーション」「人間関係」など。
【具体と抽象】「話が通じない」の正体02

抽象化とは、枝葉を切り落として幹を見る作業です。たくさんの具体的な事象から「要するに何か」という本質を取り出す。この階層を意識できるかどうかで、思考の深さが大きく変わってきます。

(2)抽象化とは「まとめて、パターンを見出す」こと

抽象化の力とは、バラバラに見える事柄の中から共通のパターンを見つける力です。

たとえば「電車の遅延」「レジの行列」「会議の長引き」——これらは具体的にはまったく別の出来事ですが、抽象化すると「待ち時間の問題」というひとつのパターンにまとめられます。パターンが見えれば、ひとつの解決策を複数の場面に応用できます。「一を聞いて十を知る」人は、この抽象化によって、少ない経験から多くの応用を引き出しているのです。

【具体と抽象】「話が通じない」の正体03

(3)具体化とは「抽象を現実に落とし込む」こと

抽象化と反対の動きが、具体化です。抽象的な概念や方針を、実際に行動できるレベルまで落とし込む力を指します。

① 「顧客満足を高めよう」(抽象)→「電話は3コール以内に取る」(具体)
② 「健康的に暮らそう」(抽象)→「毎朝20分歩く」(具体)
③ 「チームワークを大切に」(抽象)→「朝会で進捗を共有する」(具体)

抽象的なスローガンだけでは人は動けません。それを具体的な行動に翻訳できる人が、物事を前に進められます。抽象化と具体化はセットであり、両方を自在に行き来できることが理想です。

(4)「話が噛み合わない」のは、階層がズレているから

コミュニケーションのすれ違いの多くは、話している人同士の「抽象度の階層」がずれていることが原因です。

【具体と抽象】「話が通じない」の正体04

一方が「今回のミスの具体的な対処」を話しているのに、もう一方が「そもそもの仕組みの問題」を話している。どちらも正しいのに、階層が違うために噛み合いません。「具体的に言って」と求める人と「要するに何?」と求める人の対立も、この階層のズレから生まれます。相手が今どの階層で話しているかを意識するだけで、コミュニケーションは驚くほどスムーズになります。

(5)抽象化は諸刃の剣——使い方を間違えると危険

抽象化は強力な思考の武器ですが、注意も必要です。細谷さんは、抽象化の負の側面も指摘しています。

抽象化は「枝葉を切り捨てて本質を取り出す」作業なので、切り捨てられた個別の事情が見えなくなります。「最近の若者は」「あの部署は」といった過度な一般化・レッテル貼りは、抽象化の悪い使い方です。また、抽象的な議論は「わかった気」になりやすく、具体的な行動が伴わなければ意味がありません。抽象と具体を往復し、常に現実で検証する姿勢が欠かせません。

2.必要な準備

事前準備

本書『具体と抽象』:薄く読みやすい本なので、まず通読することをおすすめします。

準備するもの

・メモ帳やノート:日常の出来事を「これは要するに何か?」と抽象化して書き留めると、思考の練習になります。

・「一段上げる・一段下げる」という意識:話を聞くとき、読むときに「これは具体か抽象か」「一段上げるとどうなるか」を意識するだけで、思考のトレーニングになります。

3.参考例:具体と抽象の思考が役立つ日常の場面

例1:仕事で「応用が利かない」と言われてしまうとき

一つひとつ教われば作業はできるのに、少し状況が変わると対応できない——そんな悩みを抱えている人は少なくありません。

具体と抽象の視点からの問いかけ

これは、教わったことを「具体的な手順」としてだけ覚えていて、「要するにどういう原則か」を抽象化できていない状態です。「この作業は、何のためにやっているのか?」「本質的なルールは何か?」と一段抽象化してみましょう。

原則さえ掴めば、状況が変わっても「この原則ならこうすればいい」と応用できます。マニュアルを暗記するのではなく、その裏にある考え方を抽出する——これが応用力の正体です。

【具体と抽象】「話が通じない」の正体05

例2:会議やチームで議論が噛み合わないとき

みんな真剣に話しているのに、なぜか結論が出ない。話がずれていく——そんな会議の場面です。

具体と抽象の視点からの問いかけ

「今、それぞれが違う階層の話をしていないか?」と一歩引いて観察してみましょう。ある人は目の前の具体的な問題を、別の人は仕組み全体の抽象的な問題を話しているかもしれません。

「今は具体的な対処法を決める時間」「今は全体の方針を話す時間」と階層をそろえるだけで、議論は前に進みます。ファシリテーションが上手な人は、無意識にこの「階層をそろえる」ことをやっています。

【具体と抽象】「話が通じない」の正体06

4.まとめ:具体と抽象を往復できる人が、深く考えられる

『具体と抽象』が教えてくれるのは、「頭がいい」とは何かの正体です。それは知識の多さではなく、「具体と抽象の階層を自在に行き来できること」だと本書は示します。目の前の個別の出来事から本質的なパターンを抜き出し(抽象化)、そのパターンを別の場面で具体的な行動に落とし込む(具体化)。この往復運動こそが、応用力であり、問題解決力であり、深く考える力の源です。

私たちは日常、無意識にこの2つの階層を行き来しています。しかし「今、自分は具体の話をしているのか、抽象の話をしているのか」を意識できている人は多くありません。この本を読むと、その意識のスイッチが入ります。ニュースを見ても、会議に出ても、人と話しても、「これは具体か抽象か」「一段上げるとどうなるか」という視点が自然に働くようになります。

薄い本ですが、その効果は絶大です。読み終えた後、ぜひ日常の出来事をひとつ「要するに何か?」と抽象化してみてください。その小さな習慣が、あなたの思考の解像度を少しずつ、しかし確実に高めてくれます。

【具体と抽象】「話が通じない」の正体07

この記事を探求できるおすすめ書籍5選

『Think Smart——間違った思い込みを手放して、賢く生きるための思考法』ロルフ・ドベリ

私たちの思考に潜む52の「罠」を解説した一冊です。認知バイアスの多くは、目の前の具体的な情報に引きずられることで生まれます。『具体と抽象』で「思考の階層を意識する力」を身につけ、本書で「その思考がどう歪むか」を知ることで、判断力が立体的に鍛えられます。2冊セットで読むことで、「正しく考える」ための土台が整います。

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『自分の意見で生きていこう』ちきりん

「感想」と「意見」の違いを軸に、自分の頭で考え判断する力を育てる一冊です。自分の意見を持つには、具体的な事象から「自分はどう考えるか」という抽象的な判断を導く力が必要です。『具体と抽象』が思考の仕組みを解説するなら、本書はその思考を使って「自分の軸を持つ」ための実践書。考える力を、行動と発信につなげたい方におすすめです。

『イシューからはじめよ——知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人

「本当に解くべき問題(イシュー)は何か」を見極めることの重要性を説いた、知的生産の名著です。イシューを見極める作業は、まさに「具体的な状況から本質を抽象化する」行為そのものです。『具体と抽象』で身につけた思考法を、実際の問題解決の現場でどう使うか——その実践的な地図を本書が与えてくれます。ビジネスパーソンには特におすすめの一冊です。

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『メモの魔力』前田裕二

SHOWROOM代表の前田裕二が実践する、メモを使った思考法を紹介した一冊です。本書の核心は「ファクト(具体)→抽象化→転用」という思考プロセスにあり、まさに『具体と抽象』の考え方を日常のメモに落とし込んだ実践版と言えます。具体的な出来事から本質を抽出し、それを別の場面に応用する——その習慣を、メモという身近なツールで身につけられます。2冊を合わせて読むと相乗効果が抜群です。

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『世界一やさしい「才能」の見つけ方』八木仁平

自分の才能や強みを、具体的な行動パターンから見つけ出す方法を解説した一冊です。「自分はどんなときに力を発揮するか」という具体的なエピソードから、「自分の才能」という抽象的な本質を抽出していく——このプロセスは、まさに具体と抽象の往復です。自己理解にも「抽象化する力」が役立つことを実感できます。思考法を自分自身に向けてみたい方におすすめです。

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参考文献

細谷功『具体と抽象——世界が変わって見える知性のしくみ』dZERO

コトバのチカラ

複雑に見えることも、単純な原理原則で考えれば、おのずと答えは見えてくる。

稲盛和夫


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