第7回【韓国映画】82年生まれ、キム・ジヨン「自分の言葉を取り戻す」

82年生まれ、キム・ジヨン
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トレーラー紹介

レビュー

*原則ネタバレを含まないようにレビューしていますが、ストーリーの流れや一部分の内容、撮影手法などへの言及を含むことがありますので、情報を入れずに観たいという方は、鑑賞後にお読みください。

この映画は女性が受ける差別を描いているため、原作の小説はじめ映画公開後、韓国で賛否両論巻き起こった作品です。

82年生まれ、キム・ジヨン

タイトルの「キム・ジヨン」という名前は、1982年頃韓国でありふれた女性の名前。この映画はそんな主人公キム・ジヨンの少女時代から結婚、出産に至るまで人生を通して、韓国のジェンダー意識に関わる社会問題を織り交ぜながら、女性が負う重圧や生きづらさを映し出しています。具体的には、会社での男女間の賃金格差、出世のスピード、男性からの出産育児への偏見。また、親族からの男児出産への期待とストレス=女性の役割は「家を継ぐ男児を産むこと」が第一という家父長制の象徴、戸主制度(2005年廃止)の根深い考え、男性の育児参加や女性が働くことへの偏見。

タイトルは1982年ですが韓国での映画公開が2019年なのでまだ5年前のこと。原作の小説発行も2016年なので10年も経っていないことを考えると、いまだ韓国社会には少なくとも女性への差別は残っているものと思われます。とはいえ日本も偉そうに言える立場ではありませんが・・・。

82年生まれ、キム・ジヨン

この映画が伝えたいことは、最後のカフェから精神科医との会話のシーンに詰まっている。多くの差別や偏見に悩まされた女性個人が傷を癒してよかったね、ではなく、社会的に差別や偏見を根治するためには声を上げなくてはいけない。それも誰かの言葉ではなく、「自分の言葉」で。

「それでスッキリしました?」
「いいえ、スッキリはしませんでした でも・・・悪くはなかった」

長く当たり前のように社会の慣習となり人の心に深く刻まれたことは簡単には変えられないし、人と人とがぶつかるのでスッキリするものではない。しかし、自ら声を上げないと何も伝わらないし変わらない。私たちはこれを隣国のこととして観るのではなく、自分の国、自分の会社、自分の家族と照らし、男性は女性が苦しんでいないか、女性は声を上げ行動に移せないか考えましょう。

映画の背景を読む

(1)この映画の原作は?

韓国の作家チョ・ナムジュの小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(2016年発行)が原作で、この小説は韓国で130万部以上の販売部数を記録するベストセラー。日本を含む16か国で翻訳されています。

(2)主演チョン・ユミとはどういう人物?

チョン・ユミは韓国の女優。釜山出身、2003年デビュー。『親知らず』(2005)で新人として注目を集める。続く『家族の誕生』(2006)で韓国の映画祭青龍映画賞の助演女優賞を受賞。ちなみにチョン・ユミは82年生まれではなく、83年生まれ。また韓国の女優にはハングル表記が同じの84年生まれチョン・ユミがいるが、まったくの別人です。日本の韓流ファンには84年のチョン・ユミの方がよく知られています。

82年生まれ、キム・ジヨン

(3)「ママ虫」とは?

2015年頃から韓国で「育児をろくにせず遊びまわる害虫のような母親」「子どもが悪いことをしても叱らない母親」のことを「ママ虫」(マムチュン)という言葉でネット上でスラングとして使われるようになりました。このころから韓国の一般女性の間でも「フェミニズム」への意識が高まっていきます。

(4)韓国の共働き率や出生率は?

韓国の共働き夫婦は日本よりもかなり少なく50%以下。子のいない夫婦は増加、出生率は2023年で0.72(日本は1.2程度)で過去最低を更新しています。韓国は世界で見ても最も出生率が低い国です。

(5)エンディングロールで流れる曲は?

韓国のシンガーソングライターのヘンが歌う「ゆらゆら」です。
wavingly wavingly / HEN
https://www.youtube.com/watch?v=gUWzw6Kj4uU

基本情報

ジャンル:ドラマ
公開:2019年(韓国)2020年(日本)
時間:1時間58分
監督:キム・ドヨン
出演:チョン・ユミ、コン・ユ

コトバのチカラ

相手に無いものでお互いを定義するのをやめて、ありのままで定義するようになれば、私たちは皆、より自由を手にするはず
エマ・ワトソン

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