第3回【アメリカ映画】マルホランド・ドライブ「10回以上観れる映画」|リンチ監督の謎解き映画を徹底解説・現実と幻想の境界線

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トレーラー紹介

出典:Youtube:デヴィッド・リンチ監督の追悼上映が決定!映画『マルホランド・ドライブ 4Kレストア版』予告編(https://www.youtube.com/watch?v=SSERZHcKmSA)、シネマトゥデイ

レビュー

*原則ネタバレを含まないようにレビューしていますが、ストーリーの流れや一部分の内容、撮影手法などへの言及を含むことがありますので、情報を入れずに観たいという方は、鑑賞後にお読みください。

私は今まで何百という映画を観てきましたが、この映画を超える映画に出会ったことがありません。私が映画好きになるきっかけになった映画だからかもしれませんが、それにしてもこれほど何度も見返した映画はありません。かと言って万人にお勧めできるかというとそうではない(←ここ大事)。映画はスッキリ爽快という人には絶対にお勧めできません。

私が初めてこの映画を観た後の感想は「え?どういうこと?」でした。登場人物の名前が途中で変わったり、ストーリー内の立場は変わったりで話がねじれるので劇中でも多くの「?」が頭の上に浮かびますが、とにかく不思議な世界に入り込んだ感覚に陥ります。その後、この映画を勧めてくれた私の恩師に見解を聞いたり、ネットで情報を漁ったりして、何度も見返し「あぁ、そういうことを表現しているのか」と理解に近づいていく。でもそれは何度観ても答えのようで答えではないような感覚のまま・・・。

この映画の舞台はアメリカ・ロサンゼルス、そしてハリウッド。ハリウッドと聞くだけで華やかな世界を想像しますが、そこに映し出されるのは光と闇。デイビッド・リンチ監督のその描き方、表現の仕方がとても秀逸で吸い込まれます。そして主演のナオミ・ワッツの演技力の凄さ、この映画からナオミ・ワッツは大きく躍進し、日本で公開されるいろんな洋画で彼女を観るようになります。

私がこの映画を初めて観たのが2003年、今から20年ほど前のこと。同年、ロサンゼルス・ハリウッド・ビバリーヒルズを直接訪れました。インターネットで情報は取れても、今ほど情報整備もスマホさえ普及していない時代。そこは夢の世界のようで、一方では売春婦や麻薬の影が潜む街だったことを記憶しています。まさにこの映画はその薄気味悪さを表現し、ある意味心地よい感覚、謎解きの楽しさも生み出しています

ちなみにこの映画は公開時カンヌ国際映画祭監督賞を受賞しています。2010年にはフランスの「カイエ・デュ・シネマ」誌で「ここ10年の映画ベストワン」に、2016年にはイギリスのBBC放送で「21世紀の映画ベストワン」に選ばれています。

デイヴィッド・リンチによる10のヒント

①映画の冒頭に、特に注意を払うように。少なくとも2つの手がかりが、クレジットの前に現れている。
②赤いランプに注目せよ。
③アダム・ケシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは?そのタイトルは再度誰かが言及するか?
④事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。
⑤誰が鍵をくれたのか?なぜ?
⑥バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。
⑦クラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?
⑧カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?
⑨Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。
⑩ルース叔母さんはどこにいる?

映画の背景を読む

(1)マルホランド・ドライブは実在する?

マルホランド・ドライブ(Mulholland Dr.)はアメリカ合衆国ロサンゼルスにある実在する道です。1924年、LA市民が海や山へアクセスしやすいようにと造られた道路で、長さは約88.5kmあります。グリフィス天文台やハリウッドサイン、ダウンタウンが一望できるスポットもあります。ドライブをしながら夜景が観れるということもあり、劇中にあるように若者が車を飛ばすこともあるとか。

(2)ナオミ・ワッツという女優

ナオミ・ワッツ(Naomi Ellen Watts, 1968年9月28日)はイギリス出身の女優。ナオミという名前なので日本と関係が?と思うかもしれませんが、全く関係ありません。ナオミ(Naomi)は旧約聖書にも出てくる名前なので世界中で使われています。ナオミ・キャンベル(Naomi Elaine Campbell)もナオミですね。

ナオミ・ワッツの主な出演映画は『ザ・リング』『21グラム』『キング・コング』が日本では有名です。

(3)オーディションスタジオで歌われる曲のタイトルは?

マツコの知らない世界のオープニング曲でもお馴染みのこの曲のタイトルは、“I’ve Told Every Little Star”(星に語れば)です。元々は1932年のミュージカル映画に使われた曲ですが、1961年にリンダ・スコット(Linda Scott/1945-)によってリリースされました。男の子に告白できなかった乙女の切ない恋心を歌った曲です。

この映画を観て学べること

この映画は答えを求めるよりも、謎と向き合い続けることの意味や、複雑で矛盾した人間の内面について深く考えさせてくれる作品です。単純な善悪の判断を超えた、人間存在の根本的な不安定さを芸術的に表現した傑作と言えます。

そして現実と幻想の境界の曖昧さ、アイデンティティの流動性、夢と願望の持つ力、ハリウッドの光と影、解釈の多様性、無意識の世界、時間の非線形性を教えてくれます。

この映画を観た後に読みたい本

精神分析学・心理学に関する書籍

『夢判断』(フロイト著)は、映画の夢のメカニズムを理解する上で必読です。

『ユング心理学入門』(河合隼雄著)では、映画に登場する象徴的なイメージの意味を深く考察できます。

『解離性障害』(柴山雅俊著)は、複数のアイデンティティを持つキャラクターの心理状態を理解するのに役立ちます。

映画理論・映像表現に関する書籍

『映像の修辞学』(ロラン・バルト著)は、映像が持つ意味作用について理解を深められます。

現象学・認識論に関する書籍

『知覚の現象学』(メルロ・ポンティ著)では、現実認識の主観性について哲学的に考察されており、映画の曖昧な現実描写を理解する助けになります。

シュルレアリスム・前衛芸術に関する書籍

『シュルレアリスム宣言』(アンドレ・ブルトン著)では、無意識や夢を芸術表現に取り入れる手法について学べます。リンチの映像美学の源流を理解できるでしょう。

女性性とアイデンティティに関する書籍

『第二の性』(シモーヌ・ド・ボーヴォワール著)や『ジェンダー・トラブル』(ジュディス・バトラー著)では、女性のアイデンティティ形成や社会的役割について考察されており、映画の女性キャラクターの複雑さを理解する上で参考になります。

基本情報

ジャンル:ドラマ、ミステリー、スリラー
公開:2002年
時間:2時間26分
監督:デイヴィッド・リンチ
出演:ナオミ・ワッツ、ローラ・ハリング
受賞歴:第54回カンヌ国際映画祭監督賞
興行収入:$20,117,339(2012年)

コトバのチカラ

昼の光に、夜の闇の深さが分かるものか。
ニーチェ


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