トレーラー紹介
レビュー
*原則ネタバレを含まないようにレビューしていますが、ストーリーの流れや一部分の内容、撮影手法などへの言及を含むことがありますので、情報を入れずに観たいという方は、鑑賞後にお読みください。
20年前に公開されたタランティーノ監督作品。バイオレンス映画は好んで観ないのだけれど、当時低調気味だったジョン・トラボルタが再起した映画ということとトレーラーでもイカしてそうなので観てみました。
この投稿をInstagramで見る
アメリカらしいダイナーの男女の会話から始まる映画で、オープニングで使われる音楽も心地よく、バイオレンス映画だけどコメディみたいな会話もあります。
この時代には珍しく時間軸を操作する作りになっていて、所々であれ?となりますが、話は複雑ではないのですぐに「ケチャップ」できます。
当然バイオレンス映画なので暴力、麻薬、流血、殺人シーンがあります。刺激に弱い方にはオススメできませんが、バイオレンス映画のなかでは比較的優しい方ではないかという感覚。ちなみにエロスはほぼありません。
個人的に最後のシーンは秀逸で、一回流しただけでは理解が難しいですが、さすが数多くの受賞作品だけはあるなと思わせるエンディングです。
映画の背景を読む
(1)ジュールスが語る聖書の内容と意味は?
ジュールスは引用元を「旧約聖書のエゼキエル書25章17節」と言っていますが、実際の旧約聖書に載っているのは一部で正確ではありません。ではどこが元ネタかというと、千葉真一主演のアクション映画『ボディガード牙(1973年)』のアメリカ版の序文です。
ジュールスは初めこの意味は考えず、殺す場にふさわしい冷血な文句と思っていましたが、最後のシーンでは「真実は、貴様が弱き者、俺が心悪しき暴虐者だ。だが努力はしてる。導く者になろうと一生懸命努力してる」と自分なりの解釈を語ります。
殺し屋が人生の意義を見出す見事なラストシーンです。
(2)この映画の舞台はどこ?ダイナーは実在する?
パルプ・フィクションの舞台は、アメリカのロサンゼルス。ダイナーも郊外に「Pann’s」という名前で実在します。
お店のホームページはこちら(英語)
6710 LaTijera Blvd. Los Angeles, CA 90045
ちなみに、ヴィンセントがミアと車で向かった「ジャック・ラビット・スリム」は実在しないようですが、シカゴに似たようなお店がありました。
お店のホームページはこちら(英語)
159 E Ohio St, Chicago, IL 60611
(3)この映画のサウンドトラックはある?
クエンティン・タランティーノ監督は、映画と音楽は密接に繋がっていて、台本を書いている時、最初にやることは「オープニングでかける曲を見つけること」と言っています。
(4)マーセルスの妻ミア、ブッチの彼女ファビアンの女優名は?
ミアはアメリカ・マサチューセッツ州ボストン出身の女優ユマ・サーマン(1970-)。
ファビアンはポルトガル・リスボン出身の女優マリア・デ・メデイロス(1965-)。
どちらの女優も美しく可愛い仕草が魅力的です。
この投稿をInstagramで見る
この投稿をInstagramで見る
この映画を観て学べること
この作品は、現代社会の複雑さと人間存在の根本的な問題を、独特な映像言語で表現した現代映画の傑作として、多層的な解釈を可能にしています。
複数の登場人物の人生が偶然によって交差し、小さな選択や偶発的な出来事が人生を大きく左右することを描いています。運命の不確実性と人生の予測不可能性を示しています。
また、犯罪者でありながら哲学的な会話を交わし、時に道徳的な行動を取る登場人物たちを通して、善悪の境界線の曖昧さと人間の多面性を描いています。単純な勧善懲悪では割り切れない現実を提示しています。
さらに、印象的な会話シーンを通して、言葉による交流が人間関係や状況を変える力を持つことを示しています。日常的な雑談から深い哲学的議論まで、対話の多様性と重要性を強調しています。
一見堕落した登場人物たちにも変化や救済の瞬間が訪れることで、人間の可変性と希望の可能性を示唆しています。
この映画を観た後に読みたい本
タランティーノ研究・作品論に関する書籍
『クエンティン・タランティーノ 映画に魂を売った男』(イアン・ネイサン著)は、タランティーノの作品世界を深く掘り下げた代表的な研究書です。映画評論家として知られる町山智浩氏による詳細な分析が評価されています。
映画論・構造分析に関する書籍
『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』(クリストファー・ボグラー著)は、ハリウッド映画の構造を分析した書籍で、「パルプ・フィクション」のような複雑な物語構造を理解する上で有用です。
アメリカ文化・サブカルチャー論に関する書籍
『アメリカ映画史入門』(杉野健太郎著)は、アメリカ映画が反映する社会文化的背景を分析しており、「パルプ・フィクション」が描く1990年代アメリカの理解に役立ちます。
脚本・対話術に関する書籍
『ハリウッド脚本術』(ニール・D・ヒックス著)は、優れた脚本の構造や対話の技法について解説しており、タランティーノの会話劇の巧みさを理解する参考になります。
基本情報
原題:Pulp Fiction
ジャンル:バイオレンス・ドラマ
公開:1994年
時間:2時間34分
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ブルース・ウィリス
受賞:第47回カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最優秀作品賞)、第67回アカデミー脚本賞他
Don’t write what you think people want to read. Find your voice and write about what’s in your heart.
人がこんなことを読みたいだろうって思うことを書くんじゃない。自分の心の中にある声を見つけ出してそれを書くんだ。
クエンティン・タランティーノ
コメント