第5回【アメリカ映画】いまを生きる「物事は常に別の視点で見よう」

いまを生きる
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トレーラー紹介

レビュー

原題は“Dead Poets Society”(死せる詩人の会)であり、邦題が「いまを生きる」でなければこの映画は日本では眠っていただろうし、私も手に取ることはなかったでしょう。

この映画は1959年のアメリカバーモント州を舞台にする。有名進学校ウェルトン校に来た新任教師のジョン・キーティングは、破天荒な授業で詩の本当の素晴らしさ、生きることの素晴らしさを生徒に教える

原題の「死せる詩人の会」はキーティングがウェルトン校在学中に結成した読詩同好会で、そのことを知った生徒たちが自分たちの手で復活させることになる。しかし、ウェルトン校は四柱(伝統・名誉・規律・美徳)を重んじる学校であり、自由な発想や夢は幸福にはならないと先生も親も考えている。

学校や親に作られた道を歩むこと。すべて公式に当てはめたような答えを追い求めることが幸せな生き方だろうか。生徒がキーティングと出会い、自由な表現を考えたり、夢を見つけたり、恋をしたりして生徒の顔がイキイキとしていく様が微笑ましい。

このような教育はアメリカでも行われていたのかという驚きもあれば、一方で日本も子どもに答えを与える教育になっていないか、親や先生は子どもに自ら考えさせているか、物や情報を与えすぎていないか、大人であれ子どもであれ今の私たちが同じような危機に陥っていないか、この映画を通じて自分と自分の周りのことを考えさせられます

映画の背景を読む

(1)「おお船長!我が船長よ」の詩の続きとは?

キーティングが生徒たちに質問する、リンカーンに捧ぐホイットマンの詩「おお船長!我が船長よ」の続きとは何でしょうか?

詩の一部を引用します。

O Captain! my Captain! our fearful trip is done,
The ship has weather’d every rack, the prize we sought is won,
The port is near, the bells I hear, the people all exulting,
While follow eyes the steady keel, the vessel grim and daring;
But O heart! heart! heart!
O the bleeding drops of red,
Where on the deck my Captain lies,
Fallen cold and dead.

ああ船長!我が船長!恐ろしい旅は終わりました、
船はいくつもの嵐を抜け、求めたものは勝ち取った、
港は近く、鐘も、歓喜の声も聞こえる
皆が、この頑丈な船体を目で追っています、
なのに、ああ魂よ!魂!魂!
ああ流れる赤い血よ、
我が船長は甲板に横たわり、
冷たく命を落とすなんて

船長とはつまり南北戦争の北部を率いたエイブラハム・リンカーンのことです。しかし、彼はその直後暗殺されてしまう。リンカーンは奴隷解放宣言でも有名ですが、ウォルター・ホイットマンもまた奴隷制度廃止論者でした。劇中でその続きの内容が明らかにされなかったのは、この映画の結末に通じるところがあったからかもしれません。

ちなみにウォルター・ホイットマン (Walter Whitman, 1819-1892) は、アメリカの詩人。彼はそれまでの伝統的な詩の技法に捉われず「自由詩の父」とも言われます。

(2)「処女たちへ」から学ぶこととは?

「処女たちへ」は、イギリス詩人ロバート・ヘリックの詩”To the Virgins, to Make Much of Time”です。

「バラのつぼみは早く摘め 時は過ぎゆく」
「今日咲き誇る花も 明日は枯れる」

「バラのつぼみは早く摘め」はラテン語で「カーぺ・ディエム」。つまり「いまを生きろ」ということ。我々はいずれ死ぬ運命であり、ここにいる全員がいつか息が止まる日が来て冷たくなって死ぬのである。

若さとは価値であり、その価値を無駄にしないこと。歳を取ってからではできないことが増えてくる。自然と制限がかかってくるのである。そのことを1日でも若い時に気付くこと。カーぺ・ディエム!!

(3)私たちにとっての「詩」とは何か?

学者は詩を数値で測ろうとする。これは戦争であり、それは私たちの心や魂の危機。自分の力で考えることを学ぶのだ。言葉や表現を味わうことを学ぶ。言葉や理念は世の中を変えられる。我々はなぜ詩を読み書くのか。それは我々が人間であるという証。そして人間は情熱に満ちあふれている。詩や美しさ、ロマンス、愛こそは我々の生きる糧だ。

「おお私よ命よ 幾度も思い悩む疑問」
「信仰なき者の長い列」
「愚か者に満ちた都会」
「何の取り柄があろう 私よ命よ」
「答え・・・それは君がここにいること」
「命が存在し 自己があるということ」
「力強い劇は続き 君も詩を寄せることができる」

キーランドの言葉を引用しましたが、「詩を寄せる」とはどういうことか自分自身で考えてみましょう。

(4)机の上に立ち、生徒に伝えたいこととは?

それは物事を常に異なる側面から見つめるため。分かっていることも別の面から見直すことによって新しい考えが見つかる。それがどんなにバカらしく思えてもやってみよう。本を読む時は作者の意図より自分の考えを大切に。自ら自分の声を見つけなくてはいけない。

いまを生きる(机の上に立つ)

「人は静かな絶望に生きる」とはアメリカの詩人ヘンリー・デイヴィッド・ソローの言葉。勝手に自分の限界や枠組みを作るのではない。「静かな絶望に生きる」とは、大きな喜びも感動もなければ、大きな失望もない生き方であり、生きた証すら残らない。そんな生き方でいいの?という問いかけである。

(5)この映画のロケ地はどこ?

アメリカデラウェア州にあるセント・アンドリューズ・スクールです。昔は男子校でしたが、今は共学の学校です。

外の風景はとてものどかで、こんなところに老後住めたらいいなぁと思いますね。

基本情報

原題:Dead Poets Society
ジャンル:ヒューマン
公開:1989年(アメリカ)1990年(日本)
時間:2時間8分
監督:ピーター・ウィアー
出演:ロビン・ウィリアムズ、ロバート・ショーン・レナード、イーサン・ホーク
興行収入:$235,860,116

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