
「これは……モジャオ!」
誰かがそう名づけた瞬間、テーブルの全員が笑います。次のカードがめくられ、また別の名前がつく。ハチマキ、ドクター、みどりのおじさん。そして数枚後、さっきのモジャオが再び現れた瞬間、全員が固まる。名前が出てこない。
「えっと、えっと、モジャ……モジャモジャ!」
「違う!モジャオ!」
叫んだ人が場のカードを全部もらいます。ナンジャモンジャは、これだけのゲームです。ルールを説明するのに1分もかかりません。それなのに、遊び始めると全員が前のめりになります。
・小さな子どもから大人まで、全員が同じ条件で楽しめるゲームを探している人
・ルール説明が長いゲームで場が冷めた経験がある人
・記憶力や瞬発力を、遊びながら軽く鍛えたい人
① ナンジャモンジャを用意する(シロとミドリの2種類があります。中身のキャラクターが違うだけなので、どちらか片方で十分です)
② ルールを確認する(このページで全部わかります。説明は1分で終わります)
③ 名前をつけて遊ぶ(覚えやすい名前をつけたくなりますが、そこが罠です。詳しくは参考例で)
1.ポイント:1分で説明できて、大人が子どもに負けるゲーム
このゲームで身に付く力
遊んでいるうちに、いくつかの力が自然と使われます。
ゲーム概要
ナンジャモンジャは2011年にロシアで生まれたカードゲームです。原案はリーベディバ・アリョーナさん。助産師であり母親でもある方が、子どもが描いた絵を見てゲーム化を思いついたと言われています。イラストはフェドトヴァ・ナヂェズダさん。
日本語版は2016年にすごろくやから発売されました。「シロ」と「ミドリ」の2種類があり、それぞれ12種類のキャラクターが5枚ずつ、計60枚入っています。2つ混ぜれば24種類になり、最大12人まで遊べます。
対象年齢は4歳から。この数字は誇張ではなく、実際に4歳児が大人と対等に戦えるゲームです。むしろ子どものほうが記憶が早く、負ける大人が続出します。

ゲームのルールとポイント
ルール①:カードをめくり、初めて見るキャラなら名前をつける
山札を裏向きに置き、手番の人が1枚めくって場に表向きに置きます。そのキャラクターが初めて出てきたものなら、めくった人が好きな名前をつけます。「ヒゲじいさん」でも「たこ焼き」でも何でも構いません。全員がその名前を聞いて覚えます。
ルール②:すでに名前がついているキャラが出たら、その名前を叫ぶ
めくったカードが、すでに名前をつけたことのあるキャラだった場合、全員が競って名前を叫びます。手番の人だけでなく、全員に権利があります。
ルール③:最初に正しい名前を叫んだ人が、場のカードを全部もらう
正解した人は、場に積まれているカードをすべて自分の前に置きます。そこから場がリセットされ、次の人がめくります。間違った名前を叫んでも罰則はありません。気軽に叫んで構いません。
得点の数え方
山札がなくなったらゲーム終了です。手元に集めたカードの枚数を数えて、最も多い人が勝ちます。
計算らしい計算はありません。枚数を数えるだけです。この単純さが、小さな子どもも一緒に遊べる理由になっています。

2.必要な準備
準備時間はカードを混ぜるだけです。箱を開けてから1分で始められます。
・ナンジャモンジャ本体(シロまたはミドリ。どちらか1つあれば遊べます)
・プレイヤー2〜6人(4〜5人が一番盛り上がります)
・テーブル(全員が場のカードに手を伸ばせる距離に座ってください)
3.参考例:初心者が知っておきたい3つのコツ
(1)覚えやすい名前より、忘れられない名前をつける
最初にやりがちなのが、真面目に特徴を説明した名前をつけることです。「みどりで毛が長いやつ」のような。
しかしこれでは後に効きません。真面目な名前は他のキャラとも似た説明になるので、混ざります。むしろ「ゴンザレス」「部長」「昨日のカレー」のような、絵と関係のない名前のほうが記憶に残ります。
脈絡がないほど、脳は引っかかりを覚えます。変な名前をつけた人が結果的に有利になる、というのがこのゲームの面白いところです。
(2)自分がつけた名前ほど油断しない
不思議なもので、自分でつけた名前を自分が忘れます。名づけた瞬間は覚えている気になっているので、復習しないからです。
対策は簡単で、名前をつけたあとに一度声に出して繰り返すこと。「これはモジャオね、モジャオ」と言っておくだけで、定着率が変わります。他の人が名づけたときも、心の中で復唱しておくと後で助かります。
(3)迷ったら間違ってもいいから声を出す
間違えてもペナルティはありません。それなのに、多くの人は確信が持てないと黙ってしまいます。
黙っている間に他の人が正解します。8割の自信があるなら、口に出したほうが得です。特に大人は「間違えたら恥ずかしい」という感覚が働いて動きが遅くなります。子どもに負ける原因の半分はここにあります。
思い出そうとして固まるより、思いついた名前を口に出す。それだけで勝率が上がります。

4.まとめ:説明が1分で終わるゲームは、それだけで強い
ボードゲームを人に勧めるとき、いちばんの壁はルール説明です。10分の説明を聞き終わる頃には、初めての人の集中は切れています。
ナンジャモンジャにはその壁がありません。「カードをめくって、初めてなら名前をつける。2回目なら名前を叫ぶ。それだけ」で説明が終わります。実際にやってみせながら話せば、1分もかかりません。
そして年齢の差がほとんど出ません。将棋やカタンなら大人が勝ちます。ナンジャモンジャでは4歳児が勝ちます。記憶の鮮度と反射速度の勝負なので、経験や知識が効かないからです。子どもが本気で勝ちにくる状況を作れるゲームは、意外と多くありません。
親戚が集まったとき、職場の懇親会、初対面の人がいる場。こういう場面でとりあえず1つ持っていくなら、これが正解に近いと思います。60枚のカードだけなので、鞄に入れても邪魔になりません。
関連おすすめボードゲーム3選
ito(イト)
手元の数字(1〜100)を言葉だけで表現して、全員が小さい順に並べられるかを試す協力ゲームです。ナンジャモンジャが「名前をつけて覚える」なら、こちらは「感覚を言葉にして伝える」。どちらも言語化がカギになりますが、itoは全員で協力する形式なので、勝ち負けが苦手な人がいる場でも安心して出せます。
はぁって言うゲーム
「はぁ」の一言を、感心・怒り・とぼけなど指定された感情で演じて当ててもらうゲームです。ナンジャモンジャで場が温まったあとに出すと、さらに盛り上がります。どちらもルール説明が短く、演じる・叫ぶという身体的な要素があるので、続けて遊んでも疲れません。
ドブル
2枚のカードに必ず1つだけ共通するイラストがあり、それをいち早く見つけて叫ぶゲームです。瞬発力と観察力の勝負という点でナンジャモンジャと近く、こちらも大人が子どもに負けます。缶入りで持ち運びやすいので、旅行や帰省のお供として2つセットで持っていく人も多いです。
この学びを探求できるおすすめ書籍3選
『言語化の魔力』樺沢紫苑
漠然とした感覚を言葉にすると、なぜか気持ちが軽くなる。その仕組みを精神科医の樺沢紫苑さんが解説した本です。ナンジャモンジャでキャラクターに名前をつける行為は、まさに「見たものを言葉に変換する」作業にあたります。名づけがうまい人は、日常でも自分の感情や状況を言葉にするのが得意な傾向があります。遊びで感じた手ごたえを、生活に持ち込みたい方に。
『記憶力を強くする』池谷裕二
脳研究者の池谷裕二さんが、記憶の仕組みを一般向けに解説した一冊です。なぜ意味のない名前のほうが記憶に残りやすいのか、なぜ声に出すと定着するのか。ナンジャモンジャで体感したことの理由が、脳科学の側から説明されています。参考例で書いたコツが、なぜ効くのかを知りたくなった方におすすめです。
『超・箇条書き』杉野幹人
短い言葉で相手に伝える技術を扱った本です。ナンジャモンジャの名づけは、長い説明ではなく一語で特徴を掴む作業です。この感覚は、企画書のタイトルやメールの件名を考えるときにそのまま使えます。遊びと仕事の接点を探したい方に向いています。
基本情報
正式名称:ナンジャモンジャ・シロ/ナンジャモンジャ・ミドリ
原版発売年:2011年(ロシア)
日本語版発売年:2016年2月
原案:リーベディバ・アリョーナ(Лебедева Алёна)
イラスト:フェドトヴァ・ナヂェズダ(Федотова Надежда)
日本語版販売元:すごろくや
プレイ人数:2〜6人(シロ・ミドリを混ぜると最大12人)
プレイ時間:約15分
対象年齢:4歳〜大人
内容物:カード60枚(キャラクター12種類×5枚)
遊んでいる人間だけが、完全な人間である。
フリードリヒ・フォン・シラー(詩人・劇作家)













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