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第78回【HIGH OUTPUT MANAGEMENT】あなたの成果は、どこまでが自分のものですか?|インテルを築いた男が定義した、管理職の仕事

第78回【HIGH OUTPUT MANAGEMENT】あなたの成果は、どこまでが自分のものですか? 自己分析・自己成長
もんとり
もんとり

管理職になった人が最初にぶつかる壁があります。自分で手を動かした仕事は目に見えるのに、部下に任せた仕事は自分の成果として実感できない。会議に出て、相談に乗って、資料を確認して、一日が終わる。何もしていないような気がしてくる。

 

アンドリュー・グローブは、この問題に明確な答えを出しています。マネジャーのアウトプットとは、自分が管理する組織のアウトプットと、自分が影響を及ぼした隣の組織のアウトプットを足したものである。自分が何をしたかではなく、周りが何を生み出したかで測る。

 

グローブはインテルの3人目の社員として入社し、のちにCEOを務めた人物です。本書『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は1983年に書かれました。40年以上前の本で、例として出てくるのは工場のラインや電話の取り次ぎです。正直、古さは隠せません。それでもシリコンバレーで読み継がれ、Googleが採用したOKRという目標管理の手法も、元をたどればこの本にたどり着きます。

こんな人に読んでほしい

・管理職になったものの、自分の仕事の成果が何なのか掴めずにいる人

・会議や面談に時間を取られて、本来の仕事が進まないと感じている人

・部下への関わり方が、相手によって変わることに戸惑っている人

やってみよう!

① 先週1週間、自分が何に時間を使ったかを書き出す

② それぞれの活動について「これは何人に影響したか」を数字で書き添える

③ 影響した人数が多い順に並べ替える

④ 上位3つに、来週はもっと時間を使えないか考えてみる

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1.ポイント:管理職の成果を測り直す5つの視点

(1)マネジャーのアウトプットは、自分の外側にある

本書の出発点がこれです。マネジャーの成果は自分が生み出したものではなく、自分の組織が生み出したものと、自分が影響を与えた他部門が生み出したものの合計になります。

この定義には、少し残酷なところがあります。どれだけ本人が忙しく働いていても、組織の成果が出ていなければアウトプットはゼロです。逆に、自分は会議に出て話を聞いていただけでも、それによってチームが動いたなら、それは成果に数えられます。

「自分は何もしていない気がする」という感覚は、測る対象を間違えているだけです。

(2)朝食工場のたとえで、仕事の構造を掴む

本書には「朝食工場」という有名なたとえが出てきます。ゆで卵とトーストとコーヒーを、同時に温かい状態で出すにはどうすればいいか。この単純な問題を通して、生産の基本原理が説明されます。

【HIGH OUTPUT MANAGEMENT】あなたの成果は、どこまでが自分のものですか?01

一番時間のかかる工程(限定工程)から逆算して段取りを組む。途中で品質をチェックする。問題は早い段階で見つけるほど安く直せる。

工場の話に見えますが、書いてあるのは仕事の構造そのものです。営業でも開発でも経理でも、材料を入れて何かを加工して出す点は変わりません。ここが本書を「工場の本」ではなく「あらゆる仕事の本」にしています。

ただ、このたとえが延々と続くので、途中で退屈に感じる人はいると思います。私も最初は「早く本題に入ってほしい」と思いながら読みました。

(3)テコの効く仕事に時間を使う

グローブは、活動の価値を「テコ作用」で測ります。ひとつの行動が、どれだけ多くの成果につながるか。

・部下1人に30分教える → 影響は1人
・チーム10人に30分教える → 影響は10人
・判断を1日遅らせる → 10人が1日止まる

同じ30分でも、生み出すものが全然違います。マネジャーが最も注意すべきは、テコがマイナスに働く場合です。自分の判断が遅れると、待っている全員の時間が止まる。上司の遅延は、部下の人数分だけ損失が膨らみます。

(4)1on1は、部下のためではなく情報のためにある

グローブが広めたものの中で、今いちばん普及しているのが1on1ミーティングでしょう。日本の企業でも導入が進んでいます。

【HIGH OUTPUT MANAGEMENT】あなたの成果は、どこまでが自分のものですか?02

ただ、本書の位置づけは少し違います。1on1は「部下のケア」の場ではなく、マネジャーが現場の情報を得るための仕組みです。会議や報告書には出てこない、まだ形になっていない問題を拾い上げる場所。

だから主導権は部下側にあります。議題は部下が用意し、マネジャーは聞く。目安は90分程度とされています。日本でよく行われている30分の面談とは、性格がかなり違います。

(5)相手の習熟度によって、関わり方を変える

同じ部下に対しても、仕事の内容によって適切な関わり方は変わります。グローブはこれを「タスク習熟度」と呼びます。

習熟度が低い相手には、細かく指示を出す。中程度なら、対話しながら支援する。高ければ、目標だけ伝えて任せる。

重要なのは、これが人格の話ではなく仕事ごとの話だという点です。10年目のベテランでも、初めて扱う分野なら習熟度は低い。そこで「あの人はベテランだから任せておこう」とやると失敗します。人ではなく、タスク単位で判断する。

「あの上司は人によって態度を変える」という不満は、実は正しいマネジメントを指していることがあります。

2.必要な準備

事前準備

まとまった読書時間

用意するもの

自分の1週間の時間の使い方がわかるもの

本書は336ページあり、日本語版の翻訳は1984年版から引き継がれたものです。通勤中に少しずつ読むより、休日にまとめて読んだほうが頭に入ります。

最初から通読するのがつらければ、第2部(マネジメントはチームゲームである)から読み始める方法もあります。1on1や業績評価など、明日から使える話が集まっているのはこちらです。

3.参考例:管理職の時間の使い方を見直す

例1:会議と面談で1日が埋まり、自分の仕事が進まないとき

管理職になってから、業務時間のほとんどが人と会うことに消えている。夜になってようやく自分の作業に取りかかる。よくある状態です。

【HIGH OUTPUT MANAGEMENT】あなたの成果は、どこまでが自分のものですか?03

アウトプットの視点からの問いかけ

「夜にやっている自分の作業は、何人に影響するか」を考えてみてください。

もしそれが自分1人で完結する作業なら、テコは1倍です。一方、昼間の会議で下した判断が10人を動かしたなら、そちらのほうがアウトプットとしては大きい。夜の作業を「本来の仕事」と呼んでいること自体が、測り方の誤りかもしれません。

もちろん、テコの効かない会議に出続けているなら話は別です。その会議に出ることで何人の仕事が前に進むか、一度書き出してみると判断がつきます。

例2:部下によって関わり方が変わることに、罪悪感があるとき

Aさんには細かく確認するのに、Bさんには任せきりにしている。不公平ではないか、と気になる。

【HIGH OUTPUT MANAGEMENT】あなたの成果は、どこまでが自分のものですか?04

アウトプットの視点からの問いかけ

「その違いは、人に対してついているのか、仕事に対してついているのか」を確認してください。

Aさんが担当している業務が本人にとって初めてのものなら、細かく確認するのは正しい対応です。Bさんが3年やっている業務なら、任せるのが正しい。この場合、対応が違うのは公平さの問題ではありません。

問題になるのは、Aさんが別の業務では十分な経験を持っているのに、そちらまで細かく口を出している場合です。人単位で判断していると、こうなります。

4.まとめ:40年前の本を、今読む理由

1984年の訳がベースになっているので、例として出てくるのは工場と電話です。300ページを超える分量に、途中で止まる人も多いと思います。

それでも読まれ続けているのは、書いてあることが仕事の構造そのものだからです。テクノロジーが変わっても、人を通じて成果を出すという管理職の仕事は変わっていません。40年前に古びなかったものは、たぶんこれからも古びません。

本書から1つだけ持ち帰るとしたら、テコ作用の考え方をおすすめします。自分の時間の使い方を「何人に影響したか」で並べ替える。この作業を1回やるだけで、優先順位の感覚が変わります。全部を実践しようとすると挫折しますが、これなら今週できます。

管理職ではない方にも、意外と役立つ部分があります。上司がなぜそういう動き方をするのかが見えてくるからです。上司が判断を渋っている場面や、細かく確認してくる場面の理由が、この本を読むと違って見えてきます。

【HIGH OUTPUT MANAGEMENT】あなたの成果は、どこまでが自分のものですか?05

この記事を探求できるおすすめ書籍5選

『HARD THINGS』ベン・ホロウィッツ

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』日本語版に序文を寄せているのが、著者のベン・ホロウィッツです。シリコンバレーの起業家であり投資家である人物が、経営の苦しい局面を包み隠さず書いています。グローブの本が原則を教えるのに対し、こちらは原則が通用しない場面をどう乗り切ったかの記録です。人員削減、幹部の解雇、資金が尽きる恐怖。読んでいて重い気持ちになる本ですが、管理職の現実を知るという意味では貴重です。2冊をセットで読むと、理論と実践の両方が見えてきます。

『Measure What Matters』ジョン・ドーア

Googleが導入したことで世界中に広まった目標管理手法、OKRの解説書です。著者のジョン・ドーアはインテル時代にグローブから直接この手法を学び、投資先だったGoogleに持ち込みました。つまり本書は『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の直系の子孫にあたります。グローブが示した「目標を測定可能にする」という考え方が、その後どう発展したかを知ることができます。目標設定の具体例が豊富なので、実務にはこちらのほうが使いやすいかもしれません。

『イシューからはじめよ』安宅和人

本当に解くべき問題は何か、を見極める方法を説いた知的生産の名著です。グローブのテコ作用が「どの活動に時間を使うか」を扱うなら、本書は「どの問題に頭を使うか」を扱います。目的地が同じで、アプローチが違う2冊です。忙しいのに成果が出ないという状態は、たいてい解くべき問題を間違えていることから生まれます。管理職に限らず、仕事の優先順位に悩んでいる方に向いています。

この本はAudibleでも聴けます。通勤・家事の「ながら時間」に読書を取り入れたい方は、まず無料体験から始めてみてください。 AmazonのオーディオブックAudible

『エッセンシャル思考』グレッグ・マキューン

より少なく、しかしより良く。本当に重要なことだけに時間とエネルギーを集中させる技術をまとめた本です。テコの効く活動に時間を使うためには、効かない活動を手放す必要があります。その「手放す」部分を具体的に扱っているのがこちらです。断る技術、優先順位のつけ方、境界線の引き方。グローブの本が測り方を教え、この本が実行の仕方を教えてくれます。

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『世界標準の経営理論』入山章栄

早稲田大学の入山章栄さんが、世界の主要な経営理論を体系的に整理した大著です。800ページを超える分量なので通読は大変ですが、辞書のように必要な章だけ読む使い方ができます。『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』が実務家の経験知をまとめた本だとすれば、こちらは学術研究の蓄積を整理した本です。グローブが経験から導いた原則が、研究の世界ではどう説明されているのか。その答え合わせができる一冊です。

この本はAudibleでも聴けます。通勤・家事の「ながら時間」に読書を取り入れたい方は、まず無料体験から始めてみてください。 AmazonのオーディオブックAudible
参考文献

アンドリュー・S・グローブ『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』日経BP(2017年)

コトバのチカラ

パラノイア(病的なまでの心配性)だけが生き残る。

アンドリュー・S・グローブ(インテル元CEO、著書タイトルより)


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