トレーラー紹介
レビュー
*原則ネタバレを含まないようにレビューしていますが、ストーリーの流れや一部分の内容、撮影手法などへの言及を含むことがありますので、情報を入れずに観たいという方は、鑑賞後にお読みください。
ショーン・ペン演じる「サム」は、7歳レベルの知能を持つ知的障がいを負っている。この物語はそんなサムがホームレスの女性と関係を持ち、子ども「ルーシー」(ダコタ・ファニング)が生まれるところから始まります。
ルーシーが産まれてすぐサムは一人でルーシーを育てることになり、サムは育児に四苦八苦しながらもルーシーに愛情を注ぎ続けます。しかし、ルーシーが8歳になると、親であるサムの知能を追い越すことになる・・・。
このままサムがルーシーを育てることが彼女の人生にとってよいことなのか、彼女の成長を止めてしまわないか、逆にルーシーがサムの面倒を見ることになってしまわないか、ということで二人の生活は児童福祉局から引き裂かれてしまいます。
親子を引き裂かれたサムは児童福祉局と戦うべく優秀な弁護士を探します。一流の弁護士「リタ」(ミッシェル・ファイファー)を無料で雇うことができたサムは、何とかルーシーを取り戻すべく、リタとともに法廷で戦っていきます。
はたしてサムはルーシーを取り戻すことができるのか。結末に至るまでに繰り広げられる様々なやりとりのなかで、子供への愛情、親子のつながり、大人になった障がい者が置かれる環境など、考えさせられることがいっぱいあります。
私がこの映画を初めて観たのは2007年1月。この記事を書いているのが2023年10月ですので、初見は16年以上前のことになります。私にも子どもがいる今改めて見返してみると、親として子どもをどう育てるか、愛情があれば何でも乗り越えられるのか、本当の幸せとは何かなど、当時より深くストーリーに入ることができました。私の知り合いの80歳を超える高齢の方もこの映画をお勧めされていて、この映画はどんな世代にも心に響くんだなぁと思います。
映画の背景を読む
(1)ファミレス「アイホップ(IHOP)」は存在する?
1958年、アメリカ合衆国のカリフォルニア州でアイホップは創業されました。当初はパンケーキをメインにしていましたが、今は幅広いアメリカンスタイルの料理を提供しています。世界展開していて店舗数は1,800以上!日本にはありませんが、1978年〜2000年頃まで展開していたようです。
ハワイホノルルに2店舗あるのでハワイを訪れる際は是非行ってみてください。クヒオ通りの「オハナワイキキマリア店」とアラモアナ通りの「アクアパームズワイキキ店」があります。
ウェブサイト(英語)はこちら↓
(2)映画で使われている曲は何?
劇中で使われている曲はビートルズのカバー曲です。監督のジェシー・ネルソンは楽曲そのものを使おうとしましたが、必要な手続きが映画スケジュールに間に合わずカバー曲になったようです。
サントラCDも販売されているので、レンタル等で探して聞いてみてはいかがでしょうか?収録曲とカバーアーティストは下記の通りです。
02. Two of Us / Aimee Mann and Michael Penn
03. I’m Looking Through You / The Wallflowers
04. Across the Universe / Rufus Wainwright
05. Strawberry Fields Forever / Ben Harper
06. You’ve Got to Hide Your Love Away / Eddie Vedder
07. Mother Nature’s Son / Sheryl Crow
08. Lucy in the Sky With Diamonds / The Black Crowes
09. Golden Slumbers / Ben Folds
10. Nowhere Man / Paul Westerberg
11. Let It Be / Nick Cave
12. Don’t Let Me Down / The Stereophonics
13. We Can Work It Out / Heather Nova
14. I’m Only Sleeping / The Vines
15. Help! / Howie Day
16. Revolution / Grandaddy
17. Julia / Chocolate Genius
(3)ダコタ・ファニングと妹エル・ファニング
ダコタ・ファニングは、アメリカ合衆国の映画女優。1999年にデビューしていますので、彼女が5歳の時にこの世界に入っています。この映画を撮った時が7歳の時ですので信じられませんよね。この『アイ・アム・サム』での演技が高く評価され、各種新人賞を総なめにしています。
実はこの映画には彼女の妹エル・ファニングも出演しています。ルーシーの幼年時代として描かれているところに出ているのは妹の方です。この出演が彼女の芸能活動開始で当時2歳です。
ダコタ・ファニングもエル・ファニングも現在に至るまで数々の映画に出演していますので、是非別の作品も観てみてください!
(4)”different”と”silence”に込められた意味とは?
絵本を読むサムが、どうしても読めない単語に口ごもるシーンがありますが、その単語が“different”(違う)と”silence”(静寂)。読めないこれらの単語は、この映画に込められたメッセージ。その後のシーンでもサムはルーシーに”different”という言葉を強い口調で読ませようとします。
長い間「静寂」の中にいた2羽の鳥。
姿は「違っても」気持ちは同じ。
気持ちは「違っても」よく似ている。
とっても不思議だね。
違いを認め合うことに多くの言葉がいるのだろうか。お互いが理解し合い静かに認め合うことができる社会にしたい、というメッセージが伝わってきます。
映画公開から20年経った今、障がいだけでなくLGBTQの考え方とそれを取り巻く問題も社会に認知されるようになりました。企業にもダイバーシティやインクルージョン推進が起こり、多様性が尊重される現代になってきたといえます。
どんな違いがあってもお互いを認め合う社会って素敵ですね。
この映画を観て学べること
この映画は、障害の有無に関わらず、すべての人が尊重されるべき存在であり、愛情と努力があれば多くの困難を乗り越えられることを示した重要な作品です。
愛することに学歴や知能は必要なく、純粋な気持ちこそが最も大切であることを教えてくれます。また、社会が定義する「普通の家庭」や「適切な親」とは何かを問いかけています。外見や能力で人を判断することの危険性と、多様性を受け入れることの重要性を示しています。
さらに、サムが法廷で娘の親権を争う姿は、どんなに不利な状況でも諦めない強さを教えてくれます。周囲に理解されなくても、信念を貫くことの大切さが描かれています。そして、サムを支える友人たちや弁護士リタとの関係を通して、一人では乗り越えられない困難も、周囲の支えがあれば克服できることを示しています。助け合いの精神の重要性も描かれています。
その他、子どもの成長と親の役割、偏見と向き合う勇気、家族の多様な形、純粋さの持つ力も描かれており、様々なことを気づかせてくれる映画です。
この映画を観た後に読みたい本
知的障害・発達障害に関する書籍
『知的障害のことがよくわかる本』(有馬正高著)は、知的障害への理解を深める入門書として最適です。
『発達障害の子どもたち』(杉山登志郎著)では、発達の多様性について専門的な知識を得られます。
インクルージョン・共生社会に関する書籍
『インクルーシブ教育の実践』(コンスタンス・マクグラス著)では、共に学び共に生きる社会のあり方について考察されています。
当事者・家族の手記に関する書籍
『ぼくはアスペルガー症候群』(権田真吾著)は、当事者や家族の体験を綴った書籍は、リアルな視点を提供してくれます。
心理学・人間関係に関する書籍
『愛するということ』(エーリッヒ・フロム著)では、真の愛情とは何かについて深く考察されています。
基本情報
原題:I am Sam
ジャンル:ドラマ
公開:2001年
時間:2時間13分
監督:ジェシー・ネルソン
出演:ショーン・ペン、ミシェル・ファイファー、ダコタ・ファニング
興行収入:$97,818,139(2002年)
All you need is love.「愛こそすべてよ」
ルーシー(ダコタ・ファニング)
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