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第18回【偉人の言葉】「きみの形」|プラトンに学ぶ、大きな石だけでは石垣は積めない理由

【偉人の言葉】「きみの形」 偉人の言葉から学ぼう
もんとり
もんとり

朝起きると、シンクの食器が片づいている。玄関の靴がそろっている。誰も気づかないし、誰も口にしない。でも、それをやっている人が一日いなかったら、たぶん昼までに誰かが気づきます。

 

一方で、すごい人の話はよく耳に入ってきます。大きな仕事をした人、目立つ成果を出した人。そういう話を聞いた日の帰り道に、ふと思うことがあります。自分は、ただの数合わせなんじゃないか。

 

二千四百年前のギリシャで書かれた本に、こんな一節があります。

 

「石工はみんな知っている。小さい石もないと、大きな石だけでは石垣は上手に積み上げられない」

こんな人に読んでほしい

・すごい人の話を聞くたびに、自分は数合わせだと感じてしまう人

・毎日やっているのに、誰にも気づかれない役割を担っている人

・誰かの代わりになろうとして、自分の形を削ってしまっている人

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言葉の意味

石工はみんな知っている。小さい石もないと、大きな石だけでは石垣は上手に積み上げられない

古代ギリシャの哲学者プラトンが、最晩年に書いた『法律』という本の第10巻に出てくる言葉です。

英語の訳では、こうなっています。

As the builders say, the larger stones do not lie well without the lesser.
(石工たちが言うように、大きな石は、小さな石なしではうまく収まらない)

石を積んだことがない人でも、なんとなく想像はつくと思います。大きな石は、形がそれぞれ違います。どれだけうまく組み合わせても、石と石のあいだには隙間ができる。隙間があると、石はぐらついて、やがてずれていきます。

その隙間に小さな石を詰めると、大きな石が動かなくなる。日本の城の石垣でも、形の違う石を組み合わせて積み、隙間に小さな石を詰めていく積み方があります。この詰める石は「間詰石(まづめいし)」と呼ばれます。

目立つのは大きな石です。でも、大きな石を支えて、その場に留めているのは、隙間に入った小さな石のほうです。

【偉人の言葉】「きみの形」02

この言葉について、書いておきたいこと

調べていくと、この言葉にはもう一つ面白いことがありました。

『法律』は、登場人物どうしが話し合う形で書かれた本です。この言葉を口にするのは、プラトン本人ではなく「アテナイからの客人」という登場人物でした。しかもその客人は、「石工たちが言うように」と前置きして話しています。

つまりこれは、プラトンが考え出した言葉ではありません。名前の残っていない石工たちが、現場で言い習わしてきた知恵です。それをプラトンが書き留めたから、二千四百年後の私たちのところまで届いた。

小さな石の大切さを語った言葉そのものが、名もない人たちのものだったことになります。

【偉人の言葉】「きみの形」01

言葉の背景

プラトン(前427年ごろ〜前347年)は、古代ギリシャの哲学者です。ソクラテスの弟子で、アリストテレスの師にあたります。このシリーズの第1回で扱ったソクラテスから、系譜がつながっている人です。

【偉人の言葉】「きみの形」03

『法律』は、プラトンが晩年に書いた全12巻の本で、彼の著作の中でもっとも長いものです。理想の国をどうつくるかを、法律という具体的な仕組みから考えていく内容になっています。

この言葉が出てくる第10巻では、神々は大きなことだけでなく、小さなことにも心を配っているのか、という議論がされています。そこで客人は、こんなたとえを並べます。

医者は、体の大きな部分だけを診て、小さな部分をおろそかにしていたら、体全体を治すことはできない。船を操る人も、軍を率いる人も、家を切り盛りする人も、国を治める人も同じで、小さなことを軽んじていては大きなことがうまくいかない。

小さなことを大切にしなければ、大きなこともうまくいかない。医者や船のたとえで語ってきたこの考えを、最後に石垣の話でまとめているのが、今回の言葉です。

現代の私たちへの学び

自分は数合わせだ、と感じる日があります。

でも石垣で考えると、数合わせの石というのは、実はどれでもいい石ではありません。隙間には、それぞれの形があります。細長い隙間には細長い石しか入らないし、三角の隙間には三角の石しか収まらない。その隙間に合う形でなければ、詰めることはできない。

まっすぐで、きれいな石が良い石、というわけではないのです。いびつな形をしているから、ぴたりとはまる場所がある。

冒頭のシンクと靴の話も、同じだと思います。毎朝それをやっている人は、自分のしていることを大した仕事だと思っていないかもしれません。けれど、その人が一日いなかっただけで、家の中のどこかがぐらつく。隙間を埋めていたものがなくなると、はじめてそこに隙間があったことに気づきます。

【偉人の言葉】「きみの形」05

だから、誰かの代わりになろうとして、自分の形を削る必要はありません。大きな石と同じ形になろうとしても、隙間には入れなくなるだけです。

自分の形のままで、収まる場所がある。プラトンが書き留めた石工たちの言葉は、そういうことを言っているのだと思います。

【偉人の言葉】「きみの形」04

音楽で味わう

この曲は、合唱にしました。

たくさんの石が集まって、ひとつの壁になる話です。だから声も、一人で歌うより、たくさんの声が重なって一つになるほうがいいと思いました。静かなピアノから始まって、弦楽器と声が少しずつ重なっていく構成になっています。

やっている人には自分の話に、やってもらっている人には気づきの話になるように。

歌詞

朝になると 元に戻ってる
シンクの食器も 玄関の靴も
誰も 気づかない 誰も言わない
でも 一日 抜けたら すぐ わかる

すごい人の話を 聞くたびに
自分は ただの 数合わせかと

きみの形じゃないと 埋まらない
その隙間は きみのために あいている
大きな石ばかり 積んだ壁は
見た目より ずっと もろいんだ
まっすぐじゃなくても いびつでも
だから ぴたりと はまる場所がある

古い石垣を 見にいったら
どれも 形が ばらばらだった
まっすぐな石は ひとつもなくて
だから 何百年 崩れずにいる

きれいに 揃えて 積んだ壁ほど
ちいさな揺れで 崩れるらしい

きみの形じゃないと 埋まらない
その隙間は きみのために あいている
大きな石ばかり 積んだ壁は
見た目より ずっと もろいんだ
まっすぐじゃなくても いびつでも
だから ぴたりと はまる場所がある

外から見えるのは 大きな石だけ
その裏で 支えてるのは
名前も 知られない 小さな石で
それが 抜けたら ぜんぶ 崩れる

きみの形じゃないと 埋まらない
誰かの代わりに なんて なれない
それでいい それがいい
削って 揃える 必要はない
まっすぐじゃなくても いびつでも
きみがいるから この壁は 崩れない

この言葉をもっと深く知る本

『法律』プラトン

この言葉が出てくる本そのものです。上下巻に分かれていて、プラトンの著作の中でも分量が多く、通読するのは大変です。この言葉は下巻の第10巻に入っています。まずは第10巻だけを開いて、医者や船乗りのたとえが続く箇所を読んでみると、石工の一言がどんな流れで出てくるのかがよくわかります。

『ソクラテスの弁明』プラトン

プラトンが師ソクラテスの裁判を書いた本です。このシリーズの第1回「無知の知」で扱ったソクラテスの言葉も、この本に出てきます。薄くて読みやすく、プラトンを読むなら最初の一冊としてよく勧められています。師と弟子の両方の言葉を曲にしてきたので、並べて読むと、二人のつながりが見えてきます。

この本はAudibleでも聴けます。通勤・家事の「ながら時間」に読書を取り入れたい方は、まず無料体験から始めてみてください。 AmazonのオーディオブックAudible

『さあ、才能に目覚めよう』トム・ラス

弱みを直すより、強みを伸ばすことを勧める本です。付属のコードでオンライン診断を受けると、34の資質の中から自分の上位の資質がわかります。自分の形を削らずに、その形のまま活かすという考え方は、この曲の「削って 揃える 必要はない」と同じ方向を向いています。自分がどんな形の石なのかを知りたい人に。中古で買うと診断コードが使用済みのことがあるので、新品で買ってください。

もう一度、この言葉を

石工はみんな知っている。小さい石もないと、大きな石だけでは石垣は上手に積み上げられない
——プラトン

読む前は、小さな役割も大事ですよ、という励ましの言葉に見えていたかもしれません。

読んだあとなら、少し違って見えると思います。小さな石は、どれでもいい石ではない。その隙間に合う形をしているから、そこに収まっている。そしてこの言葉自体が、名前の残らなかった石工たちのものでした。

その人が休んだ日に、はじめて「あの人がやってたのか」と気づいたこと、ありますか。

【偉人の言葉】「きみの形」06


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