
会議や飲み会で「あなたはどう思いますか?」と突然聞かれ、「そうですね……〇〇さんの意見と同じです」と答えたことはありませんか。あるいは、ニュースを見て「なんとなくおかしい気がする」と感じながら、それ以上掘り下げられずにいることはないでしょうか。
情報があふれる現代において、自分の意見を持てないと悩む人は少なくありません。毎日大量のニュースやSNS投稿を目にしていても、「自分はどう思うか」が言語化できない——そんな状態に陥りやすい時代です。
この問題に正面から向き合ったのが、人気ブロガー・ちきりんの著書『自分の意見で生きていこう』です。「感想」と「意見」の違いから始まり、考える力を鍛えるための実践的なステップを丁寧に解説した一冊。本記事では、本書を参考に、自分の頭で考え、生きていくための思考法をご紹介します。
・会議や日常会話で「あなたはどう思いますか?」と聞かれても、うまく答えられずもどかしさを感じている人
・情報はたくさん持っているのに、自分の考えをまとめて言葉にするのが苦手な人
・なんとなく周りの意見に流されがちで、自分の軸を持って生きていきたいと思っている人
① 今日目にしたニュースや出来事をひとつ選ぶ。
② 「自分はこれについてどう思うか?」を1〜2文で書き出す。
③ 「なぜそう思うのか?」の理由を2〜3つ書き足す。
④ 書いた意見を信頼できる人に話したり、SNSに投稿したりしてみる。反応があることで、自分の意見がさらに磨かれていきます。
1.ポイント:感想から意見へ——考える力を育てる5つの視点
(1)「感想」と「意見」は根本から違う
ちきりんはまず、「感想」と「意見」の区別を明確にしています。
感想には理由がなくてもかまいませんが、意見には必ず「なぜそう思うのか」という根拠が伴います。多くの人が「意見を言っているつもり」でいながら、実は「感想を述べているだけ」というケースが少なくありません。
(2)意見が持てない人が増えている本当の理由
なぜ現代人は自分の意見を持ちにくいのでしょうか。ちきりんはその背景として、日本の教育環境を挙げています。
① 学校では「正解のある問い」への答えを求められ続けるため、正解のない問いに向き合う経験が不足している
② 他者と違う意見を言うと「空気を読めない人」と思われる社会的プレッシャーがある
③ 情報があふれているため、他者の意見をそのまま借りることが容易になった
こうした環境の中で、多くの人が「考えること」よりも「答えを探すこと」に慣れてしまっているのです。
(3)情報を集めるだけでは意見にならない——「判断」こそが本質
情報収集と意見形成は、似て非なるものです。
② 判断:集めた情報をもとに、自分がどう考えるかを決める行為
③ 意見:その判断を言葉にして表明したもの
「もっとたくさん情報を集めてから考えよう」という姿勢は、一見丁寧に見えますが、実は判断を先送りしているに過ぎないとちきりんは指摘します。情報が揃うのを待っていては、いつまでも意見は持てません。ある程度の情報を得たら、あえて「今の自分はどう思うか」を決めることが、思考力を鍛えるカギです。
(4)正解のない問いに向き合う——意見に「正しさ」は必要ない
自分の意見を言えない人の多くが、「間違ったことを言ったらどうしよう」という恐れを抱えています。しかし、意見に唯一の正解はありません。
・意見とは「現時点での自分の判断」であり、後から変わっても構わない
・「間違うこと」を恐れるより、「考えること」を大切にする姿勢が重要
・異なる意見と出会うことは、自分の考えを更新するチャンスでもある
「正解を言わなければ」というプレッシャーを手放すことで、初めて「自分の意見」が生まれてきます。
(5)意見を発信することで、考える力がさらに鍛えられる
意見を持つことと、意見を表明することは別のステップです。しかし、ちきりんはこの「発信」を強く勧めています。
頭の中にあるぼんやりとした考えを言葉にしようとすると、思考の整理が進みます。さらに、人に話したりSNSに書いたりすることで、他者の反応や反論を受け取ることができ、その刺激が思考をより深めてくれます。「考えてから発信する」だけでなく、「発信しながら考える」というサイクルが、意見を持つ力を飛躍的に高めるのです。

2.必要な準備
・メモ帳またはノート:頭の中の考えを書き出すために使います。スマホのメモアプリでも構いません。「書く」という行為が、意見を形にする上で非常に効果的です。
・5〜10分の「考える時間」:毎日ひとつのテーマについて自分の意見を考えてみる習慣が、思考力を育てる最短ルートです。
3.参考例:日常に潜む「意見が出てこない」場面を乗り越える
例1:会議で「何かご意見はありますか?」と聞かれ、何も言えないとき
感想を一段階掘り下げてみる
まず「感想」から始めてみましょう。「この提案を聞いてどう感じたか?」を問いかけると、言葉が出やすくなります。次に「なぜそう感じたのか?」を掘り下げると、それが意見の芽になります。
たとえば「この案、なんか難しそうだな(感想)→ コスト面の根拠が示されていないからかもしれない(理由)→ コストの試算を先に確認したほうがいいと思う(意見)」という流れです。意見は、感想を一段階深めた先に生まれます。
例2:SNSやニュースで話題のテーマについて「なんとなくモヤモヤするけど、うまく言えない」とき
「何に引っかかっているか」を3つ書き出す
「自分は何に引っかかっているのか?」を3つ書き出してみましょう。書き出すことで、漠然としたモヤモヤが具体的な言葉に変わります。
たとえば「この報道、なんか腑に落ちない(感想)→ ①影響を受ける側の声がない、②数字の根拠が不明確、③比較対象がない(3つの理由)→ この報道は一方向の情報しか伝えていないと思う(意見)」という形です。モヤモヤは、掘り下げると意見の原石です。

4.まとめ:「考える人」になることが、自分の人生を生きることにつながる
『自分の意見で生きていこう』が伝えているのは、単なる「話し方」のテクニックではありません。「自分の意見を持つ」ということは、「自分の人生を自分で選んでいく」ことそのものだ——そうちきりんは語りかけます。
日常の会話、職場の会議、SNSでのやりとり。意見を持てるかどうかは、情報の多さや学歴とは関係ありません。感想を掘り下げ、判断を言葉にし、それを発信してみる。その小さな積み重ねが、「考える筋肉」を育てていきます。
特に印象的なのが、「正解がない問いに向き合う経験が圧倒的に少ない」という指摘です。受験や資格など「正解のある問い」ばかりを解き続けてきた私たちは、正解のない問いを前にすると思考停止してしまいます。しかし本書は、「正解がないからこそ、自分の意見が価値を持つ」と教えてくれます。
この本を読んだ後、日々の小さな出来事についてひとつ意見を持ち、言葉にしてみてください。その習慣こそが、ちきりんの言う「自分の意見で生きていく」ことへの、着実な第一歩になるはずです。

この記事を探求できるおすすめ書籍5選
『言語化の魔力——言葉にすれば「悩み」は消える』樺沢紫苑
「なんとなく不安」「うまくいかない気がする」——そんな漠然とした感情を言葉にすると、なぜかスッと楽になる。そのメカニズムを精神科医・樺沢紫苑が丁寧に解説した一冊です。感情や思考を言語化する力は、自分の意見を持つ上でも欠かせないスキルです。「意見を持ちたいけれど、まず言葉が出てこない」という方に特におすすめ。感情の言語化から始め、思考の言語化へとステップアップできる、実践的な内容が詰まっています。
『超・箇条書き——「10倍速く、魅力的に」伝える技術』杉野幹人
頭の中にある考えを、相手に伝わる形で整理する力。それが「箇条書き」の本質です。本書は単なる「まとめ方」の本ではなく、思考を構造化するトレーニングブックとも言えます。意見を言葉にした後、それをどう整理して伝えるかに悩む方に最適な一冊。『自分の意見で生きていこう』とセットで読むことで、「考える力」と「伝える力」を同時に鍛えることができます。
『具体と抽象——世界が変わって見える知性のしくみ』細谷功
「具体的に話せ」と言われながらも、一方で「抽象的に物事を見る力」こそが思考の深さを決める——という逆説的なテーマを扱った思考書です。意見を持つためには、目の前の事実(具体)と、その背後にある本質(抽象)を行き来する力が必要です。「なぜこうなっているのか」「この先どうなるのか」を考えるための知的フレームワークが身につきます。難しそうに見えて読みやすく、「考えること」の楽しさに気づかせてくれる一冊です。
『Think Smart——間違った思い込みを手放して、賢く生きるための思考法』ロルフ・ドベリ
私たちの思考は、気づかないうちに認知バイアス(思い込みや偏り)に引っ張られています。本書はスイスの作家・実業家であるロルフ・ドベリが、日常に潜む52の「思考の罠」を、ユーモアたっぷりに解説した一冊です。「自分の意見を持つつもりで、実はメディアや他者の意見に操られていないか」——そんな視点を養うために最適。自分の思考の「クセ」を知ることで、より精度の高い意見形成が可能になります。
『ファクトフルネス——10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング
世界の現状について、私たちはどれだけ「思い込み」で判断しているか——スウェーデンの医師・統計学者ハンス・ロスリングが、豊富なデータと軽快な語り口で問い直す世界的ベストセラーです。意見を持つためには、「正確な事実を把握する」という土台が欠かせません。データに基づいて考える習慣は、感情や先入観に流されない意見を形成するための最強の武器になります。「情報を持っているつもりで実は偏っていた」という気づきを、楽しみながら得ることができます。
参考文献
ちきりん著『自分の意見で生きていこう──「正解のない問題」に答えを出せる4つのステップ』ダイヤモンド社(2022年)










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