
皆さんは「美術」の授業は好きでしたか?小学校の授業では絵を描いたり物を作ったりするのは好きだったけど、中学生になると途端に苦手になった人も多いのではないでしょうか?そうなると大人になって美術館に行く選択肢はなくなります。しかし「美術」から学べることは今の現代社会において必要不可欠であり、「ものの見方」を変えればその楽しさにも気づくことができます。
・美術館を楽しみたい人
・美術の授業が苦手だった人
・アート思考を学びたい人
(推奨人数:3人以上)
①1つの美術作品を用意する。
②作品を見て気づいたことや感じたことを声に出したり、紙に書き出してみる。(作品の背景や説明は見ないこと)
③複数人でやる場合はそれぞれ気づきを発表する。
④他の人と自分との視点の違いを書き留めてみる。
1.ポイント:アウトプット鑑賞をしてみよう
今回は美術講師や東京学芸大の個人研究員でもある末永幸歩さんの著書『13歳からのアート思考』を参考にしています。正直な話、私も絵を描くのは苦手ですし、美術館に行って作品を見ても解説を読んでふーんというくらいにしか興味がありませんでしたが、この書籍を読んでからは美術作品を見る目が変わりました。
「アウトプット鑑賞」は自分自身の目を使って作品と向き合うアート思考をするための入り口の鑑賞方法です。どんな小さなことでもよいので、気づいたことを声に出したり、紙に書いたりしてアウトプットしていきます。
この鑑賞の良さは漠然と作品を眺めるよりもはるかに「よく見る」ことができることです。そして複数人でアウトプット鑑賞をすることで、自分自身では思い至らなかった新しい気づきが生まれることになります。

アウトプット鑑賞をするときは、その作品の背景や作者のことなど解説をすぐに見るのはやめましょう。美術館では簡単な作品の説明や音声ガイドが用意されているところも多いですが、まずは何もなしで作品と向き合いましょう。
2.必要な準備
美術作品を数点用意しておく。
気づきを書くことができる紙とペン
3.参考例:アウトプット鑑賞を膨らませよう
本書でも冒頭で紹介されているクロード・モネ(1840-1926)の『睡蓮』です。このような美術館でも展示されているような作品を探してみましょう。

アウトプット鑑賞が済み全員の発表が終わったら、鑑賞をもう1段面白くする方法があります。それは次の2つのシンプルな問いかけをしてみることです。
(1)どこからそう思う?
主観的に感じた「意見」の根拠となる「事実」を問うこと
例えば、ある絵画を見て「明るくて心地よい」というあなたが主観的に抱いたアウトプットが出てきたとすると、「どこからそう思う?」と問いかけます。すると「この鮮やかな黄色の部分」とか「この人の表情が笑っているから」とか、その作品の「事実」をアウトプットすることにつながり、自分の意見がどこから生まれたのか、はっきり認識することができます。
(2)そこからどう思う?
作品内の「事実」から主観的に感じた「意見」を問うこと
「そこからどう思う?」という問いかけは(1)の逆です。例えば「いろんな植物が描かれている」という作品内の事実がアウトプットされたとすると、「そこからどう思う?」と問うことで「色鮮やかで元気が出てくる」とか「この植物の名前を知りたい」とかいう感想が生まれてきます。これはあなたが主観的に感じた「意見」であり、あなたなりの「ものの見方」に基づいてアウトプットされた「自分なりの答え」です。
このように「感じた意見」に対して「発見した事実」を、「事実」に対して「意見」をアウトプットすることが、よりアート思考に近づく秘訣です。
4.まとめ:VUCAワールドに生きる私たちに大切なこと
現代社会は「VUCA(ブーカ)ワールド」と形容されます。VUCAとは「Volatility=変動」「Uncertainty=不確実」「Complexity=複雑」「Ambiguity=曖昧」の頭文字を取った造語で、あらゆる変化の幅も速さも方向もバラバラで、世界の見通しがきかなくなったということを意味しています。
一昔前までは社会の中で答えを見つけていくことが成功への道で「正解を見つける能力」こそが求められていました。しかし、今のVUCA社会においては答えを見つけても、一つのテクノロジーが社会の枠組みを丸ごと変えてしまうことすら起きうるため、新しい答えを見つけることは不可能に近く無意味になりつつあります。
このレールに従っていれば大丈夫!これさえやっておけば正解だ!ということが期待できない今大切なことは、人生のさまざまな局面で「自分なりの答えを作る能力」を鍛えることです。
私たちの周りにはたくさんの物や情報が溢れ、私たちはそれを取捨選択しながら便利に生活をしている一方で、答えがすぐに調べられることで、自分だけのものの見方や考え方が喪失しています。流行りの物を手に入れ、みんなと同じようなものに囲まれている。高評価のお店でみんなと同じものを食べて喜んでいる。ネットニュースやSNSで世界を知った気分になっている。LINEで人と会話しただけでコミュニケーションの本質を掴んだと思っている・・・。
最近「自分なりの視点」で物事を考えた記憶を振り返ってみてください。もしそれが思い浮かばないのであれば、今こそ「美術」という観点からアート思考を学ぶことで、今からの社会を生き抜くヒントになることでしょう。
この記事を探求できるおすすめ書籍5選
『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』末永幸歩
この記事の参考文献として挙げている書籍そのものです!美術教師である著者が、中高生向けの授業をベースに、アート思考のプロセスをわかりやすく解説した一冊です。この記事で紹介している「アウトプット鑑賞」はまさにこの本の核心部分で、作品を見て気づいたことや感じたことを声に出したり紙に書き出すことで、漠然と作品を眺めるよりもはるかに「よく見る」ことができると説いています。特にクロード・モネの『睡蓮』を例に、「どこからそう思う?」「そこからどう思う?」という2つの問いかけを繰り返すことで、自分なりの「ものの見方」を発見する方法が具体的に示されています。この記事で伝えている「VUCA社会において自分なりの答えを作る能力を鍛える」というメッセージと一致する内容で、20世紀アートを代表する6作品を通じて、美術館での鑑賞が100倍楽しくなる思考法が身につきます。『いちばんやさしい美術鑑賞』青い日記帳
人気美術ブログ「青い日記帳」の中の人が、美術鑑賞の基本から応用までをやさしく解説したベストセラーです。この記事の「美術館に行って作品を見ても解説を読んでふーんというくらいにしか興味がありませんでした」という正直な感想に対し、この本では作品の背景や作者のことなど解説をすぐに見るのではなく、まずは自分の目で作品と向き合う方法を具体的に教えてくれます。特に「作品を見る前に知識を仕入れすぎない」「自分の感じたことを大切にする」という姿勢は、この記事で紹介している「アウトプット鑑賞」の考え方と深く繋がります。美術館の選び方、展覧会の見方、作品鑑賞のコツなど、今すぐ実践できる内容が満載で、美術の授業が苦手だった人でも美術館を楽しめるようになる一冊です。『ぐんぐん「正解」がわからなくなる!アート思考ドリル』若宮和男
東京大学でアート研究に従事し、IT業界で新規事業を立ち上げてきた著者による、ワークショップ形式でアート思考を体感できる実践書です。この記事では「作品を見て気づいたことや感じたことを声に出したり、紙に書き出してみる」というアウトプット鑑賞を紹介していますが、この本では12個の「正解がわからなくなる」ドリルを通じて、自分の思い込みや固定観念に気づき、それを乗り越える体験ができます。特に「現代アートを通してアート思考を訓練する方法」が具体的に示されており、この記事で提案している「どこからそう思う?」「そこからどう思う?」という2つの問いかけと同様のプロセスを、様々な角度から実践できます。大人はもちろん子どもでもできるワークが用意されており、楽しみながらVUCA時代に必要な「自分なりの答えを作る能力」を鍛えられる一冊です。『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』秋元雄史
金沢21世紀美術館前館長で東京藝術大学大学院教授による、アート思考の本質を探求した一冊です。この記事では「VUCAワールド」という言葉で、「正解を見つける能力」ではなく「自分なりの答えを作る能力」が求められる時代だと伝えていますが、この本ではデザイン思考とアート思考の違いを明確にし、なぜビジネスパーソンがアートを学んだ方がいいのかを具体的に解説しています。特に「デザイナーが生み出すのが解決策(答え)であるのに対し、アーティストが生み出すのは問いかけ」という視点は、この記事で紹介している「流行りの物を手に入れ、みんなと同じようなものに囲まれている」という現代の問題への処方箋になります。現代アートの価値、資本主義との関係、アートが切り開く未来像など、美術館での鑑賞体験をより深い思考に繋げるヒントが満載です。『知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法』神田房枝
ビジネススクールで「知覚力」を教える著者による、アートを通じて物事を深く観察する力を養う一冊です。この記事では「自分だけのものの見方や考え方が喪失しています」という現代人の課題を指摘していますが、この本ではハーバード大学医学部でも導入されている「Visual Thinking Strategy(VTS)」という手法を使い、絵画を観察することで知覚力を高める方法を解説しています。特に「事実を観察する」「推論する」「他者の意見を聞く」というプロセスは、この記事で紹介している「どこからそう思う?」「そこからどう思う?」という2つの問いかけと深く繋がります。美術館での鑑賞を、単なる趣味ではなく、ビジネスや日常生活で活かせる実践的なスキルに変えるための具体的な方法が学べます。アート思考を身につけることで、VUC A社会を生き抜く力が養われる一冊です。参考文献
末永幸歩『「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考』ダイヤモンド社、2020年
すべての子どもはアーティストである。問題なのは、どうすれば大人になったときにもアーティストのままでいられるかだ。
パブロ・ピカソ

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