
論理的な頭を持ちたいけど、どうやって鍛えたらよいか分からない。ロジカルシンキングの本は堅苦しくて読みにくい。とにかく楽しく学びたい。そんな方に今回はクイズ形式でロジカルシンキングを学べる方法をご紹介します。アイスブレイクにも使えるので教える側の人にもおすすめです。
・論理的思考を身につけたい方
・企業教育担当や教職員の方
・アイスブレイクのアイディアを探している方
①論理的思考の重要性を知る。
②仲の良い仲間で集まる。
③みんなでロジカルクイズを解いてみる。
④理解できないところはお互いに教え合う。
1.ポイント:論理的思考の重要性
(1)そもそも論理的思考とは?
論理的思考とは、「筋道を立てて考える力」です。感情や思い込みではなく「なぜそうなるのか?」を説明できるようにする考え方です。
たとえば、「AだからBになる。BならCをすべき」のように、理由→結果→行動がつながっている思考です。
(2)論理的思考を鍛える3つのメリット
①話が通じるようになる(「伝える力」がアップする)
論理的に話せると、相手が「なるほど」と思える説明ができます。
OK例:「この案はコストが予算を20%超えるため、見直すべきです」
ビジネスでも教育現場でも、伝え方に説得力があると評価されやすくなります。
②問題解決がスムーズになる
ロジカルに考えると、問題の「本当の原因(=根本原因)」にたどり着けます。
論理的に掘る:アクセス数減 → 広告停止 → 広告費削減 → 経営判断が原因
「どう直すか」の前に「何が原因か」を見抜けるのが強みです。
③感情に振り回されにくくなる
論理的に考えられると、感情で決めず、落ち着いた判断ができます。
「今の仕事で得ているスキルは?他の選択肢は?」と整理できる
ストレス耐性や意思決定力も高まり、メンタル面の安定にもつながります。
(3)論理的思考が苦手でも大丈夫!
論理的思考が苦手な人に多いのは次のようなパターンです。
・考えているうちに混乱してくる
・感情に流されがち
これは「才能」ではなく「技術」なので、以下のように練習で身につけられます。
(4)論理的思考を育てる3つの練習法
①「なぜ?」を3回繰り返す
問題の本質を見抜く訓練になります。
②主張 → 理由 → 具体例の型で話す練習
話がわかりやすくなる。
③クイズや謎解きで「筋道を立てる」遊びをする
楽しみながらロジック力が鍛えられる。
今回は、この練習法③で使えるクイズを紹介します。
2.必要な準備
論理的思考の重要性を認識しておく。
なし
3.参考例:アイスブレイクにも使えるロジカルクイズ集
問題集
Q1:チョコレートの箱
ここにA、B、Cの3つの箱があります。美希が次のように言いました。
美希は決してウソをいいません。あなたは箱を1つだけもらえます。
あなたがチョコレートをほしいなら、どれをもらうのが賢明ですか?

Q2:正直者のナナ
ここに3人(ナナ、舞、ともみ)がいます。
B「Cはナナです」
C「Aは舞です」
少なくともナナは真実を述べています。さて3人の本当の名前は?

Q3:犬と狐
ここにいる3匹は犬か狐です。(どちらも少なくとも1匹はいます。)
犬は常に真実を述べますが、狐は真実を述べたり、ウソを述べたりします。
B「Cは犬です。」
C「ここにいる犬は1匹だけです。」
さて、どれが何でしょう?

Q4:バードウオッチング
きのう与之介、ひとみ、由香の3人はそれぞれ、鷲(ワシ)、鷹(タカ)、モズのうち、2種類を見ました。見た2つが同じ者はいません。
ひとみ「私は鷹を見ました。」
由香「私はきのうハンバーガーを食べました。」
「ある鳥」を見た者の発言はウソで、見てない者の発言は真実です。
「ある鳥」とは何でしょうか?

Q5:ウソをついているのは?
高校生5人が、学校新聞のインタビューに答えました。
静香 「愛はウソをついています。」
麻衣 「私はプールを裸で泳いだことがあります。」
恵美 「麻衣はウソをついています。」
千夜子「麻衣も恵美もウソをついています。」
さて、この5人のうち、ウソをついているのは何人ですか?

Q6:飼っているヤギの数
A・B・Cの3人はヤギをそれぞれ2匹以上4匹以下飼っています。次の発言は、自分より飼っているヤギが少ない者に関してなら真実、そうでないならウソです。
B「Cが飼っているのは3匹か4匹です。」
3人はそれぞれヤギを何匹ずつ飼っているでしょう?

解答と解説
解答だけを確認するのではなく、その解答に辿り着くそのプロセスも理解しましょう。口で説明するのが難しい場合は、紙に書き出してみると頭の整理がしやすくなります。
A1【解答と解説】:チョコレートの箱
答え【C】
「どれをもらうのが賢明か」という問いは「どの箱にチョコレートが入っている確率が高いか」ということです。
条件2:AかBにチョコレートが入っていれば、必ずBとCにも入っている。
条件をもとにチョコレートが入っているパターンを確認しましょう。
| Aの箱 | Bの箱 | Cの箱 | |
|---|---|---|---|
| パターン1 | ○ | ○ | ○ |
| パターン2 | × | ○ | ○ |
| パターン3 | × | × | ○ |
| パターン4 | × | × | × |
パターンを洗い出すと答えは明確ですね。
この時に注意することは、抜け漏れがないようにしましょう。
A2【解答と解説】:正直者のナナ
答え【A:舞、B:ともみ、C:ナナ】
条件2:ナナの発言は真実である。
条件3:舞とともみの発言は真実かウソか分からない。
条件を確認するときに、不確実な条件は一旦無視します。この場合、条件3は一旦横に置いておきましょう。
「ナナの発言は真実であること」に注目すると、おのずとCがナナであることが分かります(A・Bがナナであると仮定すると、条件2とその発言が矛盾します)。
ナナは真実しか述べないため、ナナの発言を真実とすると、Aが舞であることが分かります。そうすると条件1から残りのBがともみということになります。
A3【解答と解説】:犬と狐
答え【A:狐、B:狐、C:犬】
条件2:犬と狐は少なくとも1匹以上いる。
条件3:犬の発言は真実である。
条件4:狐の発言は真実かウソか分からない。
Q2の考え方と同様、不確実な条件4は無視します。
では、それぞれの発言が犬だったと仮定して検証していきましょう。
(Aが犬と仮定する場合)
犬の発言は真実のためBもCも犬になり、条件2及び条件3と矛盾する。
結論:Aは犬ではない
(Bが犬と仮定する場合)
犬の発言は真実のためCも犬になり、条件3と矛盾する。
結論:Bは犬ではない
(Cが犬と仮定する場合)
C(犬)の発言は真実なので、ここには犬が1匹(C)しかいない。必然的にA・Bは狐になり、Aの狐はウソを、Bの狐は真実を入っていることとするとこの仮定は成立する。
A4【解答と解説】:バードウォッチング
答え【モズ】
まず注意することは、この問題の問いは「誰がどの鳥を見たか」ではなく、「どの鳥を見たらウソをつくのか」です。同じように条件を考えましょう。
条件2:「ある鳥」を見た人はウソをついている。
条件3:「ある鳥」を見ていない人は真実を述べる。
条件4:同じ2種類を見た人はいない。
条件に不確実な要素はありませんが、由香の発言「私はきのうハンバーガーを食べました。」はこの問題に全く無関係ですので無視しましょう。
今回はある鳥が分からないため、ある鳥を仮定しながら進めます。
(ある鳥を鷲(ワシ)と仮定する場合)
与之介は鷲を見たと言っていますが鷲を見たらウソをつくため、
与之介が本当に見たのは「鷹(タカ)・モズ」となり、
条件3と発言が矛盾することになる。
結論:ある鳥は鷲(ワシ)ではない
(ある鳥を鷹(タカ)と仮定する場合)
同様に、ひとみは鷹を見たと入っているため、
ひとみが本当に見たのは「鷲(鷲)・モズ」となり、
条件3と発言が矛盾することになる。
結論:ある鳥は鷹(タカ)ではない
(ある鳥をモズと仮定する場合)
与之介がモズを見ていれば、与之介が見たのは「鷹(タカ)・モズ」
その場合、ひとみが見たのは「鷲(ワシ)・鷹(タカ)」
由香が見たのは「タカ・モズ」ということなります。
与之介がモズを見ていなければ、与之介が見たのは「鷲(ワシ)・鷹(タカ)」
その場合、ひとみが見たのは「鷹(タカ)・モズ」
由香が見たのは「タカ・モズ」ということなります。
結論、与之介とひとみが何を見たのかは分からないままですが、モズを見た人がウソをついていることに矛盾は生じないため、正解がモズになることを導けます。ちなみに、由香がきのうハンバーガーを食べていないことは明らかです。
A5【解答と解説】:ウソをついているのは?
答え【3人】
Q4同様に注意することは、この問題の問いが「誰がウソをついているか」ではなく、「何人がウソをついているか」です。愛と麻衣の発言は、どれだけ考えても真実かウソかは分かりませんので無視しましょう。よって注目する発言はそれ以外の3人です。
「誰々はウソをついている」という発言が本当である場合は、発言者は真実を語り、誰々がウソをついているということになります。逆に、「誰々はウソをついている」という発言がウソである場合は、誰々は真実を述べているということになります。
つまり、愛と静香、麻衣と恵美の関係はどちらかの発言が真実でどちらかがウソということになり、両方が真実、両方がウソということにはならないため、この中でウソをついているのは2人です。
さて、それでは残った千夜子の発言「麻衣も恵美もウソをついています。」は上述の通り、両方がウソということにはならないため、千夜子の発言はウソとなり、合計3人がウソをついているという結論が導けます。
A6【解答と解説】:飼っているヤギの数
答え【A:2匹、B:2匹、C:2匹】
最後の問題はちょっとだけややこしいですが、同じように条件をまとめてみましょう。
条件2:発言相手の飼っているヤギの数が自分より少なければその発言は真実である。
条件3:条件2でなければ、その発言はウソである。
ここで条件3を分解すると以下のようになります。
・飼っているヤギの数が自分より少ない場合の発言はウソ
・飼っているヤギの数が自分と同じ場合の発言はウソ
「そうでなければ」という問題文を「自分より少なければウソ」とだけ読み間違えないようにしましょう。
(Aがヤギを4匹飼っていると仮定した場合)
Aの発言が真実:Bが飼っている数は3匹です。→成立
Aの発言がウソ:Bが飼っている数は4匹ですが発言と矛盾→不成立
Bの発言が真実:Cがが飼っている数は2匹ですが発言と矛盾→不成立
Bの発言がウソ:Cがが飼っている数は3匹か4匹ですが発言と矛盾→不成立
結論:Aが飼っているヤギの数は4匹ではない
(Aがヤギを3匹飼っていると仮定した場合)
Aの発言が真実:Bが飼っている数は2匹ですが発言と矛盾→不成立
Aの発言がウソ:Bが飼っている数は3匹か4匹ですが発言と矛盾→不成立
結論:Aが飼っているヤギの数は3匹ではない
(Aがヤギを2匹飼っていると仮定した場合)
Aの発言が真実:条件1からBは2匹以上飼っているため不成立。
Aの発言がウソ:Bが飼っている数は2匹です。→成立
Bの発言が真実:条件1からCは2匹以上飼っているため不成立。
Bの発言がウソ:Cが飼っている数は2匹です。→成立
結論:AもBもウソをついており、それぞれが飼っているヤギの数は2匹。
4.まとめ
論理的思考は、人生のあらゆる場面で役立つ「汎用スキル」です。プレゼン、会話、問題解決、仕事、勉強、子育てなど、あらゆる判断がラクになります。最初は苦手でも「型」を覚えて少しずつトレーニングすれば、必ず身につきます。だからこそ、早いうちから練習する価値がある思考法なのです。
クイズの他にも論理的思考を鍛える方法としては、プログラミング学習で論理の順序や条件分岐の考え方を身につけたり、ボードゲーム・カードゲームで戦略思考が身につきます。
論理的思考は、知識よりも「考え方」の習慣です。遊びや会話を通じて、「なぜ?」を一緒に考える時間を増やしましょう。継続すれば、「わかりやすく伝える力」や「問題を整理する力」が自然と育ちます。
この記事を探求できるおすすめ書籍5選
『ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル』照屋華子、岡田恵子
2001年発売以来、ロジカルシンキングの名著として読み継がれているロングベストセラーです。この記事では「筋道を立てて考える力」や「なぜそうなるのか?を説明できるようにする考え方」が論理的思考として定義していますが、この本ではMECE(ミッシー)とSo What?/Why So?という2つのシンプルなツールで、論理的に考え表現する技術を体系的に学べます。練習問題も豊富に掲載されており、この記事で紹介されているようなクイズ形式で楽しく学ぶだけでなく、ビジネスシーンで実際に使える実践的なスキルを身につけられます。ロジカルシンキングの基礎から応用まで網羅した決定版です。『ミステリー・パズルMURDLE 謎に包まれた100の事件の真相を解明せよ!』G・T・カーバー
アメリカでシリーズ累計100万部を突破し、32の言語に翻訳されている大人気論理パズル集です。この記事の「やってみよう!」の中で様々なロジカルクイズを紹介していますが、この本では探偵「ロジコ」が解決する100問の殺人事件を通じて、推理グリッドを○×で埋めていく論理パズルを楽しめます。「容疑者」「現場」「凶器」に関する記述から、誰が何を使いどこで犯行に及んだかを論理的に導き出すプロセスは、この記事で伝えている「問題の本当の原因にたどり着ける」論理的思考のトレーニングに最適です。老若男女が楽しめる脳トレとしても人気で、アイスブレイクにも使えます。『クイズで88本ノック 最強クイズ集団からの”謎解き”挑戦状』QuizKnock
伊沢拓司率いる最強クイズ集団「QuizKnock」が88問の謎解きを出題する一冊です。この記事では「楽しみながらロジック力が鍛えられる」というメッセージを伝えていますが、この本ではレベル1〜3に分かれた問題構成で、子どもから大人まで自分の難易度に合わせて誰でも楽しめます。オールカラーでイラスト満載、どの問題から解いてもワクワクする構成になっており、この記事で紹介しているような「アイスブレイクに使える」謎解きクイズが豊富です。QuizKnockメンバーによる座談会「ぼくらはこうしてクイズに強くなった」も収録されており、論理的思考を楽しく身につけるヒントが満載です。『多角的思考力を鍛える55の論理パズル』北村良子
パズル作家による、論理的思考力を楽しみながら鍛えられる論理パズル集です。この記事では「チョコレートの箱」「正直者のナナ」「犬と狐」といった具体的な論理クイズを紹介していますが、この本では55問の多様な論理パズルを通じて、段階的に論理的思考力を高めることができます。特に「解答だけを確認するのではなく、その解答に辿り着くそのプロセスも理解しましょう」というこの記事のメッセージと一致する構成で、各問題に丁寧な解説がついています。ヒントページもあるので初心者でも取り組みやすく、企業教育担当や教職員の方にもおすすめの実践的な内容です。『すこしずるいパズル』たつなみ
ゲームクリエイターが作った、直感を裏切る「ずるさ」が醍醐味の謎解きパズル本です。この記事では「感情に流されがち」「考えているうちに混乱してくる」という論理的思考が苦手な人のパターンを紹介していますが、この本では「問題文をよく見る」「少しずるい発想で考える」というトレーニングを通じて、固定観念にとらわれない柔軟な思考力を養えます。オールカラーで丁寧なヒントもあるので謎解き初心者でも楽しめ、この記事で伝えている「クイズや謎解きで筋道を立てる遊びをする」という練習法にぴったりです。しりとり迷路、穴埋めクロスワード、カタカナ迷路など多彩なパズルが収録されており、アイスブレイクとしても活用できます。参考文献
なし
知識を持つことと、それを使って論理的に考えることは別物だ。
アリストテレス

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