
・転職活動がうまくいっていない人
・これから転職活動を始める人
・新米面接官の人
①転職サービスの商流を知ろう
②求人票には書かれないことを読み解こう
③履歴書や職務経歴書の見られるポイントを知ろう
④面接官が候補者を見るポイントを知ろう
⑤内定承諾までに人事担当が考えることを知ろう
1.ポイント:転職サービスの商流を知ろう
転職するときに、仕事の見つけ方は以下の方法があります。
□ 転職エージェントを使う
□ 転職スカウトサービスを使う
□ 転職サイトで探す
□ 求人検索エンジンで探す
□ ハローワークで探す
□ 家族や友人等からの紹介
□ 志望企業に直接問い合わせる
このような方法がありますが、いろんなサービスの商流を知ることで見えてくるものがあります。
転職エージェントの商流
転職エージェントに登録する最大のメリットは、担当のコンサルタントがついて転職活動のサポートをしてくれることです。登録しても求職者からの費用発生は全くないので安心してください。ではどのようにビジネスが行われているのかというと、求人を出す企業から費用が発生しています。そのほとんどは「成功報酬型」となっており、求職者がその企業に内定承諾または入社したタイミングで費用が発生します。
その費用は「求職者へ提示した想定年収×35%」程度です(エージェントや取扱職種により料率は変わります)。つまり、想定年収500万円の求職者を採用した場合は、「175万円」が採用企業からエージェントへ支払われることになります。
大手転職エージェントに登録する方が求人数が多いのは確かです。求人数が多いということは、求職者が希望する求人がある可能性も高いということ。しかし、大手転職エージェントだからといって、担当者がすべて「転職のプロ」とは限りません。何十年と経験したベテラン社員が担当になることもあれば、新卒数年目の社員が担当になることもあります。なので、担当は正直当たり外れがありますので相性が合わない、御用聞きだけの担当に当たった時は、別のエージェントへ登録するか、担当を変えてもらいましょう(担当変更はできないことが多いと思います)。
エージェントとの面談についても、訪問対面、オンライン面談のみ、電話ヒアリングのみと様々ですのでその手法はどうあれ、一方的な仕事紹介だけでなく「自分のことを親身に考えてくれる」エージェントを探すことをお勧めします。
おすすめ転職エージェント【PR】
リクルートエージェント(20代〜30代)
JACリクルートメント(30代後半〜)
転職スカウトサービスの商流
転職スカウトサービスとは、求職者として登録をしたら採用企業や転職エージェントからスカウト(仕事の紹介)が来るサービスです。スカウトサービスに登録したら求人募集をかけている企業から直接オファーが来ることもあれば、前項で紹介した転職エージェントからオファー(エージェントへの登録を通じた仕事紹介)が来ることもあります。転職エージェントからオファーを受け取りたくなければ、経歴を非公開にすることもできます。言葉を選ばずに言えば、スカウトサービスという求職者の池に、転職エージェントが釣り糸を垂らしているような構図が出来上がっているのです。
基本的にスカウトサービスも無料で使うことができます。一部、求人閲覧の拡大や使えるコンテンツを増やすため、月5,000円程度で会員ランクを上げるようなスカウトサービスもありますが、個人的には全く必要ないと思います。特に自分の市場価値を知りたいだけであれば、何もしなくてもどんな企業からどれだけのオファーが来るかで見極めることは可能です。
スカウトサービスも求人する企業からお金を貰っています。求人掲載は無料で求職者へのスカウトメールを送れる通数分費用が掛かる仕組み、スカウトメールは何通も送れるが求人掲載の時点で費用が発生する仕組み、採用が決まればエージェント同様「想定年収×料率」が掛かる仕組みなど様々です。
おすすめスカウトサービス
転職サイトの商流
転職サイトとは、多くの企業が有料で求人を掲載しているサイトのことです。企業がお金を多く払えば、掲載期間が長くなったり、求人表示回数が増えたり、検索上位に出てきたり、使えるコンテンツ量が増えたりします。転職エージェントやスカウトサービスを使うより安価で始められるため、採用費用を多く出せない企業も含まれています。
個人的に転職サイトでの仕事探しはお勧めしません。よっぽど企業を見る目があったり、掘り出し企業を探したりしたいのであればよいですが、転職サイトに登録しても個別にサポートがあるわけではないので、登録しても見るだけにしておきましょう。
転職サイト(参考)
求人検索エンジンの商流
求人検索エンジンとは、仕事探しに特化した検索サイトです。最大手はindeedです。こちらも求人企業、転職エージェント、転職サイトがindeedに課金して求人を掲載しています。無料でも求人掲載できる検索エンジンが多く、こちらは転職サイト以上に求人がひしめき合っています。この中から自分に合った求人を見つけるのは非常に困難なため、こちらも登録するなら見るだけにしましょう。
求人検索エンジン(参考)
ハローワークの商流
ハローワークは国の機関であるため、商流はありません。企業はハローワークへ無料で求人を出すことができます。企業側からすると採用費がかけられないか、他では集められないので藁にもすがる思いの企業が多いため、こちらも転職活動で使う必要はありません。
家族や友人等からの紹介
最近は「リファラル採用」という採用手法もあり、取り入れている企業もあります。自社の社員が、友人や知人などを企業に紹介し、採用につなげる手法のことです。企業に勤める社員であれば、社風や活躍人材のイメージが分かるため、マッチングの精度が高まります。また、リファラル採用に掛かる費用も、紹介してくれた社員への還元程度なので採用費も下がります。
求職者にとって、もしそういう話が舞い込んできた場合、楽で簡単な道が見つかったような気持ちになるかもしれませんが、企業側や紹介者側には良くても、本当にやりたい仕事ができるのか、条件が見合うのか、紹介者とより近い関係になって人間関係が崩れないか、など慎重に考えて決めましょう。
志望企業に直接問い合わせる
どうしても入りたい企業があるのであれば、直接企業のホームページから問い合わせしてみるもの一つです。企業側からしてみればノーコストで採用できるわけですから「そこまでしてウチの会社に入りたい人であれば」とプラスに捉えられるか、「どこにも就職が決まらない必死な人なのかな」とネガティブに捉えられるかのどちらかでしょう。
2.必要な準備
求人票(複数社分)
履歴書
職務経歴書
3.参考例:選考各段階における採用側視点
求人票には書かれないことを読み解こう
求人票には絶対に記載しないといけない項目もあれば、必ずしも載せる必要がない項目もあります。企業側はアピールになれば積極的に載せますが、そうでなければ具体的に書きませんし、あえて載せません。それでもポイントを押さえれば企業側の思惑も読み取ることができます。手元に求人票を何社分か用意してみてください。
募集背景とポジション
この求人がなぜ出されているのか背景を知りましょう。既に退職した人、又は、これから退職する人の代替要員、業務過多による補充要員、増収増益を見込む強化要員、組織の若返りのための育成対象要員など募集背景は様々です。配属される部署やチームが何人構成なのか、役職構成、年齢層や男女比など、働く場所での自分自身のポジションを確認することでその募集背景が掴めるかもしれません。
平均残業時間
求人票に書かれている平均残業時間は、採用部署の平均時間になっているはずですが、企業規模の小さい会社では会社全体の平均時間になっていたり、感覚ざっくりな時間になっていたりすることもあるため、同じ部署の自分と近い仕事をする人がどれくらい残業をするのか確認しましょう。この部署はいつも帰るのが早いけれど、こちらの部署はいつも残っているみたいなことはよくあることです。
固定残業手当
賃金に固定残業手当が含まれる場合は、何時間分の残業代が含まれているのか記載する必要があります。固定残業手当という名前ではない場合もありますので、必ず確認しましょう。固定残業手当を付けている会社は、労務管理がザルな場合(固定残業代以上は支払わない場合=違法)もありますので、実態はどうか企業側に確認しましょう。
想定年収
想定年収の計算方法は細かく書かれませんので、必ず確認しましょう。月額給与×12ヶ月であれば簡単ですが、賞与がある場合は支給基準がどうなっているかで年収は大きく変わります。特に基準がない場合は「前年実績●ヶ月」と書かれており、その月数で想定年収が記載されています。つまり、企業業績が好調か不調かにより、大きく上がる可能性、大きく下がる可能性があるということです。業績が悪くても最低何ヶ月分は出る見込みかは聞いておきましょう。
賞与基準
賞与は「●ヶ月分」という記載がされますが、掛け算元の数字が何か確認しておきましょう。例えば、基本給+複数手当がある場合など、どの手当までが賞与の基準に含まれるのかで、単純に月額給与×●ヶ月ではない場合があります。
転勤の有無、異動の有無
採用時に決められた就業場所や、配属部署での仕事内容が将来変わることがあるのかどうか確認しましょう。求人票の就業場所及び仕事内容欄に「変更の範囲」という項目があります。変更の範囲に書かれていることが「会社が定める場所」「会社が定める範囲」となっている場合は将来の転勤や異動(仕事内容の変更)はありえます。「変更の範囲」の記載がなければ企業に確認しましょう。
離職率
離職率はほとんどの企業記載していませんので、「3年以内で辞められる方はどれくらいいらっしゃいますか?」と聞いてみましょう。
履歴書や職務経歴書の見られるポイントを知ろう
人事の採用担当は書類選考の際、多くの履歴書や職務経歴書を見ます。もちろん企業の採用基準に合う人材かどうかを見るのですが、それ以前にどんな会社も気にするポイントを以下にまとめていますので確認してください。
■ 誤字脱字がないか、単語や数字表記を統一しているか
■ 顔写真の印象がよいか
■ 何社経験しているか、各社勤続何年勤めているか
■ 今まで何を経験してきたか、実績があるか
■ 自己PRから入社意欲が伝わるか
■ 推薦状に何が書かれているか(転職エージェント経由応募の場合のみ)
誤字脱字がないか、単語や数字表記を統一しているか
文書中に誤字脱字がある、言葉の使い方や数字表記の仕方がバラバラである場合、書類作成を任せられない人、相手に分かりやすい資料が作れない人ということになってしまいますので、履歴書・職務経歴書は完成しても何度も読み返したり、誰かに読んでもらったりしてミスを無くし、精度を高めていきましょう。転職エージェントによってはチェックしてくれる担当もいますが、エージェントは国語の先生ではないので、自分自身でしっかり完成させましょう。
顔写真の印象がよいか
書類で一番印象を与えるのが履歴書に貼る顔写真です。以前は手書きの履歴書が普通だったため、文字の丁寧さも印象を与える一つにありましたが、今はほとんどパソコンで作成しますので、より顔写真が印象を残します。特に営業職のように入社後お客様の前に立つような仕事の場合、人前に立ったときにどういう印象を与えるかを考えるため、表情や写真全体の明るさ、髪型服装、構図などが印象良く見える写真を貼りましょう。顔では落とさないという採用担当も人ですから、無意識下に与えている印象は必ずあります。
何社経験しているか、各社勤続何年勤めているか
年齢に対して何回転職をしているのか、一社一社の勤続年数はどのくらいか確認します。辞めた理由は面接の場でしか聞き出せませんが、明らかに転職回数が多い場合や勤続年数が短すぎると書類で落とさざるを得ません。入社してもすぐに辞めてしまうのではないかという懸念を書面で払拭できればよいですが、それはかなり難しいものと捉えておきましょう。
今まで何を経験してきたか、実績があるか
職歴から今までどのような業界や職種を経験してきたか、その経験の幅や深さはどの程度かを確認します。それが自社で活かせるスキルや経験かを照らし、求めている人材であれば次に繋がるでしょう。よってそのスキルや経験は、具体的に記載することが大切です。今まで勤めた会社で上げた実績を数量化や状態化で表現しましょう。
自己PRから入社意欲が伝わるか
自己PRを書く欄が履歴書にも職務経歴書にもあります。その内容は志望理由にも近くなると思いますので、できれば応募する企業ごとに自己PRを変えらえるとベターです。自己PRでその企業への入社意欲が高いことを伝えることができれば、採用担当の気持ちも動くかもしれません。また、あなたの人間味や人となり、仕事への考え方が伝わるような文書であれば、採用担当も自社に合いそうな人かどうか考えてくれるでしょう。
推薦状に何が書かれているか(転職エージェント経由応募の場合のみ)
転職エージェント経由で企業に応募すると、エージェントは応募企業にあなたを紹介する際、履歴書・職務経歴書と一緒に「推薦状」を添付します。そこには「推薦理由」「あなたの人物像」「退職理由」などが記載されます。その推薦状は求職者の目に触れることはないため何が書かれているかは分かりませんが、企業の採用担当からすると書類選考の判断基準になります。エージェントの担当と面談する時は、応募企業にもあなたの良さが伝わるように、しっかりコミュニケーションを取ることを意識しましょう。
面接官が求職者を見るポイントを知ろう
次は面接の場で面接官が見ているポイントです。当然こちらも各企業で基準があるため、かなり意識して見ているポイント、そこまで重要としていないポイントがありますが、求職者側からは分からないので、以下項目は最低見られていると思って面接に臨みましょう。
■ 身なりが整っているか
■ コミュニケーションが心地よく取れるか
■ 目を見て話せるか
■ 主体的な行動ができそうか(指示待ちではないか)
■ 育てたい、教えたいと思える人材か
■ 退職理由・仕事の選び方に筋が通っているか
■ 会社や仕事の理解をできているか
■ なぜ当社で働きたいのか
■ 配属する部署で活躍できそうか
■ 望んでいる働き方が実現できるか
■ 入社時期が企業が希望する時期と合っているか
■ 他社の選考状況に遅れていないか
■ 希望年収に見合うか
内定承諾までに人事担当が考えることを知ろう
企業が内定を求職者に出した後は、人事担当はどうしたら内定を受けてくれるか考えます。内定を出した後に面談をしたり、会社の雰囲気を見せたりしながら、入社承諾へのモチベーションを高めてもらおうとします。
内定承諾期限を切られることがほとんどですので、それまでには内定を受けるかどうか決断しましょう。既に内定は出ているわけですから、不安や疑問を持ったままにせず、転職エージェントを使っていれば担当を通じて、使っていなければ直接人事に問い合わせ、不安や疑問は解消して承諾することをお勧めします。注意しておくことは、企業から賃金等の条件が提示された後は、条件の駆け引きをしてはいけません。希望条件は最終面接が終わった後、内定が出るまでに必ず伝えておくことです。
4.まとめ
企業側が一人の人材を採用するのにかける労力や費用について理解していれば、どのように転職活動を進めた方が良いか、内定が出るまでにどのようなことを想定しておけば良いか踏まえることができます。
企業側にも組織における採用背景があるため、人材採用基準には企業それぞれの考え方があります。どんなにいい大学を出て、どんなに有名な会社に勤めていても書類選考で落とすことはありますし、ポテンシャルを感じて書類選考は通してみようかな、となることもあります。
また、求人票には性別の指定や年齢幅の指定は特定の条件を除いて記載することはできません。しかし、企業にもどういう人を採用したいかという基準はあるため、「総合的に判断して」条件に満たない求職者は落とすしかありません。なので、「なぜ私が落とされたのか分からない!」ということは考えてもしょうがないですし、自分のスキルや経験が必ずしも否定されたわけでもないので、書類選考が通らないからといって落ち込むことはありません。しかし、スキルや経験、皆さんの人の良さを知ってもらう前に、きちんと意識して準備していればクリアできることで落とされないようにしましょう。
彼を知り己を知れば百戦殆からず
古代中国のことわざ(孫子の兵法)
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