第59回【人を選ぶ技術】面接の質問で人を見る目を磨こう【面接教本】|エピソードを聞く質問で行動特性を知る

【人を選ぶ技術】面接の質問で人を見る目を磨こう
もんとり
もんとり
当社への志望動機を教えてください。面接ではテッパンのこの質問にどんな意味あるのでしょうか?「御社が第一志望です」というやる気に満ちた言葉に、面接官が安心感を得るためでしょうか?今回は、面接で人を選ぶために必要な質問の仕方を紹介します。
こんな人に読んでほしい

・面接をする人事の人

・人を雇う経営者の人

・人を見る目がないと思っている人

この記事を書いた人
門鳥(もんとり)
人材業界で約20年のキャリアを持ち、長年人事として新卒及び中途採用に携わり、年間何百人もの履歴書・職務経歴書を見てきました。大学や専門学校で就職支援のガイダンスや自己分析、模擬面接などキャリア支援の経験もあります。現在は転職して大手インフラ企業グループで人事責任者をしています。
やってみよう!

①2人組を作る。

②面接官役、応募者役を決める。

③模擬面接をしてみる。

④役割を交代する。

⑤お互いにどの質問が一番聞きたかったことを聞けたか振り返る。

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1.ポイント:エピソードを聞く質問をする

起業家でありヘッドハンターの小野壮彦さんが書かれた『経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術』を参考に、面接で人を見る目を磨くためのポイントを押さえていきましょう。この書籍はとても読みやすく、面接教本にもなります。個人的には今年読んだ本の中でも上位の良書です。

【人を選ぶ技術】面接の質問で人を見る目を磨こう01

多くの面接では協調性や団結心、会社への共感、企業文化とのフィットについて問う質問をします。それを聞くための質問を投げかけますが、その質問で本当に聞きたいことがあぶり出せているでしょうか?

例えば「あなたはチームプレイができますか?」という問いでは、容易に相手は「面接官は自分自身がチームプレイができるかを聞きたいんだな」ということに感づきます。それが分かれば「高校時代に野球をしていてチームで一つの目標に向かう喜びを知りました」とか「前職では積極的にチームで情報共有をして会社の売上に貢献しました」とか、その質問に合わせた答えをしてくるでしょう。

また、「ストレスが溜まった時はどういうふうに解消しますか?」という問いでは、「カラオケに行きます」とか「友達と話を聞いてもらいます」とかの答えが返ってきますが、このやりとりにどんな意味があるのでしょうか。

これでは「こんな話を振られたら、あなたはどう答えられますか選手権」でしかありません。もはや面接官自身が相手の何を見ようとしているかすら不明確な形だけの面接で「この人は何かいい感じだね」というだけで内定を出してしまいます。

そうならないようにするための大事なことは「エピソードを聞く質問をする」ということです。例えば「今までの仕事や人生における自分の行動で、最も誇りに思うことは何ですか?」ということを投げかけ、その答えに対するエピソードを話してもらいましょう。この質問の仕方であれば、こちらが欲しい答えを意図的に打ち返すことができません。

そして、そのエピソードの内容から相手がどのようなことに重心を置かれているか=大切にしている価値観のコアを知ることができます。仮にそのエピソードがノルマ達成に重心があれば、さらに「一緒にやっていたチームについてもお話しいただけますか?」と深掘りしていくような感じです。

このように、エピソードを軸に多面的にその人の行動特性をあぶり出していき、最終的に会社が用意する項目と照合していくのです。

2.必要な準備

【人を選ぶ技術】面接の質問で人を見る目を磨こう02

今は会社が選ぶ立場だけでなく、応募者も会社を選ぶ時代です。上から目線の堅苦しい面接ではなく、相手にストレスをかけず、能力を引き出し才能を逃さないことが大切です。

事前準備

・向き合う前にお互いに深呼吸する

・真正面で向き合って座らない(こぶし1個分ずらす)

・1対複数では行わない

・笑顔やフレンドリーな言葉遣いなどで楽しい雰囲気作りをする

・パソコンは持ち込まない

用意するもの
・向き合える形のデスクと椅子
・静かな環境

3.参考例:エピソードを聞く質問例

「あなた自身が前職で一番実績を上げた話を聞かせてください」
「完璧な会社はないと思いますが、あなたが勤めた前職において何か改善の働きかけをした話を聞かせてください」
「あなたの前職の上司(先輩)はどんな人で、どんなことを学びましたか?」

よく考えれば面接官が何を聞きたいか分かると思いますが、「あなたのエピソード」を主軸にして質問をすることで、その人の行動特性を知ることができます

エピソードを聞くだけでは表面的な話で終わることも多いため、さらに気になるポイントがあれば深掘りしていきましょう。

「その実績をあげるのはどれだけ大変でしたか?」
「その改善の働きかけに反対する人はいませんでしたか?」
「その上司(先輩)とは馬が合いましたか?」

過去を深掘りする内容に躊躇してしまいそうですが、基本的にポジティブな質問のため、答える側も嫌な気持ちにはならないでしょう。

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4.まとめ:意見ではなくファクトを意識すること

人選びに必要なのは「意見」ではなく「事実=ファクト」です。

「あなたの理想のチームマネジメントとは?」という質問には、その人がやってきた事実も含まれるかもしれませんが、行動や経験はしたことがないけれど「こうあるべき論=意見」で終わってしまうこともありえます。

しかし「チームマネジメントでうまくいったときの話をしてください」と聞けば、意見にはなることはありません。作り話や誇張した話をする人もいるかもしれませんが、上述したように、気になるポイントを深掘りしていけばそのウソも見抜けるはずです。

あわせて、人を選ぶ際には「感情」も不要であることを心得ましょう。喜びや怒りなどの感情はその場の雰囲気やシチュエーションに左右されやすく再現性がありません。それよりも再現性の高い行動特性を知ること。つまり、何をしたかというファクトは、似たようなシチュエーションでは同じ行動になる可能性が高いということです。

このように、人の行動特性を知ることで人を見る目も養われます。面接の場だけでなく営業の商談や会食、デートなど少人数で他人と向き合う場面でも行動特性を探る質問をすることで相手のことが分かるでしょう。過去のエピソードからこの人はこんな場合にこういう行動に出るんだ、ということがつかめていることで関係構築のヒントになるでしょう。

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今回紹介した『経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術』にはもっとたくさんの学びが詰まっています。人事採用関係の方はもちろん、新しい人と出会うことが多い方にはおすすめの一冊です。

この記事を探求できるおすすめ書籍5選

『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』小野壮彦

この記事の参考文献として挙げている書籍そのものです!起業家×経営者×コンサルのトリプルキャリアを持ち、世界最高峰ヘッドハンティングファームの共同経営者を務め、100社以上、5000人超のハイクラス人材を見極めた著者による、2022年11月発売の一冊です。この記事で紹介している「エピソードを聞く質問をする」というアプローチは、まさにこの本の核心部分です。特に「あなたはチームプレイができますか?」のような意図が透けて見える質問ではなく、「今までの仕事や人生における自分の行動で、最も誇りに思うことは何ですか?」というエピソードを軸にした質問で行動特性をあぶり出す方法が詳しく解説されています。人間を「構造」で捉える本書のメソッドを身につければ、誰もが「人を見る目がある人」になれると約束する実践書です。

『[新版]人材を逃さない見抜く面接質問50』キャロル・マーティン、岡村桂訳

フォーチュン500社はじめ多数の会社の人事にかかわってきたプロの面接担当者による、面接官から根強い人気の一冊が2024年3月に新装改訂版として登場しました。この記事では「意見ではなくファクトを意識すること」「エピソードを聞く質問例」を紹介していますが、この本では伸びる人・伸びない人を見分けるキラークエスチョンが50問収録されています。特に「応募者から本音を引き出し能力を判断できる、的確な質問とは?」という問いに対して、行動面接(Behavioral Interview)の手法を使った具体的な質問例が満載です。この記事で伝えている「こんな話を振られたら、あなたはどう答えられますか選手権」ではない、本質的な面接質問の方法を学べます。

『「使える人材」を見抜く 採用面接』細井智彦

官庁、大手、ベンチャー企業の人事担当・現場マネジャーから社長まで、1500人以上の面接官を指導してきた著者による実践的な面接の技法書です。この記事では「『あなたの理想のチームマネジメントとは?』という質問には意見で終わってしまうこともある」と指摘していますが、この本では「実行力を見抜く質問は?」「チャレンジ精神・本気度を見極めるには?」といった具体的な質問方法をNG例とOK例で解説しています。特に「面接を書類だけではわからない情報を得るためと本気で考えている面接官が多い」という問題意識から、応募者の本質を見抜く質問法が体系的に示されています。新米面接官から経験者まで、面接スキルを格段に向上させられる一冊です。

『世界最高水準の採用セオリー 採用基準・面接質問・評価の仕方が格段に上がる』深堀一雄

2万人以上の面接経験を持つ著者が、採用面接の本質を100の提言として体系化した実践書です。この記事では「感情も不要であることを心得ましょう。喜びや怒りなどの感情はその場の雰囲気やシチュエーションに左右されやすく再現性がありません」と言及していますが、この本では曖昧な評価基準(「コミュニケーション能力の高さ」「チャレンジ精神」など)を疑い、科学的に人材を見極める手法が解説されています。特にこの記事で紹介している「過去を深掘りする質問」「気になるポイントを深掘りしていけばそのウソも見抜けるはず」という視点と一致する、行動特性を見抜く質問技術が満載です。

『改訂版 上手な採用面接が面白いほどできる本』菊池一志

人事コンサルタントとして多くの企業の採用支援を行ってきた著者による、採用面接の実践ガイドです。この記事では「真正面で向き合って座らない」「1対複数では行わない」「笑顔やフレンドリーな言葉遣いなどで楽しい雰囲気作りをする」といった環境づくりの重要性を伝えていますが、この本では採用フロー全体から面接での具体的な質問内容まで、網羅的かつ実践的に解説されています。特に質問の掘り下げ方や、様々な業界から来る中途採用者に対する質問例が豊富で、この記事で提案している「エピソードを聞く質問」を実践する際の参考になります。曖昧な質問を避け、具体的に人物を見極める方法が学べる一冊です。

参考文献

小野壮彦著『経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術』フォレスト出版、2022年

コトバのチカラ

多くの人が、話上手だから人との関係は得意だと思っている。

対人関係のポイントが聞く力にあることを知らない。

ピーター・ドラッカー


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