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第16回【偉人の言葉】「叩かれてこそ」|マルコムXに学ぶ、批判よりつらいのは何も言われないこと

【偉人の言葉】「叩かれてこそ」 偉人の言葉から学ぼう
もんとり
もんとり

はじめて書いた記事に、見知らぬ人から辛口のコメントがついた。投稿した企画に、会議で三つ反論が出た。そういう日の夜は、だいたい寝つきが悪くなります。

 

そんなときに出てくるのが、この言葉です。

 

「もし君を批判する者がいないなら、君はおそらく成功しないだろう」

 

批判されるのは前に出ている証拠だ、と言ってくれる。落ち込んだ人を立たせる力があります。

 

ただ、この言葉を調べていくうちに、二つのことが分かりました。ひとつは出典のこと。もうひとつは、この言葉がほんとうに刺さるのは、批判された人ではないかもしれない、ということです。

こんな人に読んでほしい

・発信や提案をしたあとで、否定的な反応にへこんだことがある人

・何か始めたいけれど、言われるのが怖くて踏み出せていない人

・出したのに何の反応もなくて、静かにしんどくなったことがある人

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言葉の意味

もし君を批判する者がいないなら、君はおそらく成功しないだろう

マルコムXの言葉として広く知られています。

意味は読んだとおりです。誰からも何も言われないということは、誰の視界にも入っていないということ。何かを動かせば必ず誰かが反応する。だから批判は、前に出ている人のところにしか来ない。

英語では “If you have no critics you’ll likely have no success.” という形で広まっています。

【偉人の言葉】「叩かれてこそ」01

この言葉について、書いておきたいこと

この言葉には、一次資料が見つかりません。

名言を集めたサイトの多くがマルコムXの言葉として載せています。ただ、どの演説なのか、どの著作の何ページなのかを書いているものがひとつもない。「出典未確認」と正直に注記しているサイトもありますし、まったく別の人物の名前で載せているところもありました。

つまり、本人が言った記録はありません。しかしそれでも書いているのは、彼の人生のほうに、この言葉そのものが残っているからです。

言葉の背景

マルコムX(1925〜1965)は、アメリカの公民権運動の時代にもっとも激しい言葉で黒人の権利を訴えた人です。

この人がどれだけ叩かれたかを並べると、少し異常です。

まず白人の主流メディアから。1959年のテレビ番組『The Hate That Hate Produced』で全米に知られるようになりますが、そのタイトルからして「憎しみが生んだ憎しみ」です。登場の仕方からして、憎悪を煽る人物という枠に入れられていました。

次に、同じ公民権運動の側から。非暴力を掲げる主流の指導者たちは、彼の強硬な主張を危険だと批判しました。黒人の権利を求める点では同じ方向を向いていたのに、です。

そして、自分が所属していた組織から。1964年に彼はネーション・オブ・イスラムを離れます。そのあとは元の仲間から命を狙われる立場になりました。自宅に火炎瓶を投げ込まれたこともあります。

1965年2月21日、ニューヨークのオーデュボン舞踏場で演説を始めたところを銃撃されて亡くなりました。39歳でした。白人社会から、運動の仲間から、かつての組織から。三つの方向すべてから批判された人です。

この言葉が本人のものかどうかは分かりません。それでも彼の名前がついて広まったのは、たぶん、これ以上ふさわしい人がいなかったからだと思います。

【偉人の言葉】「叩かれてこそ」02

現代の私たちへの学び

ここまで読むと、この言葉は「批判されている人を励ますもの」に見えます。

ただ、もう一段だけ掘ってみたいことがあります。

批判はつらいです。それは間違いない。でも、ほんとうにつらいのは、どちらでしょうか。

出したのに、誰も何も言わない。褒められもしないし、けなされもしない。感想もない。数字も動かない。

これは、叩かれるよりじわじわ効きます。叩かれたほうは少なくとも「届いた」ことが分かります。何も起きなかったほうは、それすら分からない。マルコムXの言葉を裏返すと、こうなります。批判されていないということは、まだ誰のところにも届いていないということ。だから、この言葉がほんとうに向いているのは、叩かれて落ち込んでいる人ではないのかもしれません。何も言われないまま、静かにやめようとしている人のほうです。

批判は、少なくとも前に進んでいる証拠が残ります。無反応には、何も残りません。

そう考えると、否定的なコメントがついた夜は、思ったより悪くない夜です。

【偉人の言葉】「叩かれてこそ」03

音楽で味わう

この曲は、アフリカのドラムとブラスを使ったお祭りのようなアンセムにしました。

批判の歌なので、しんみりした曲にもできました。でもそうしなかったのは、マルコムXが最後まで誇りを下ろさなかった人だからです。うつむいて耐える歌ではなく、叩かれながら踊っている歌にしたかった。

歌詞で気に入っているのは、サビの真ん中にある一行です。

誰にも何にも 言われないなら まだ何も 始めちゃいない

曲のタイトルは「叩かれてこそ」ですが、いちばん刺さるのはここだと思っています。叩かれている人に向けた歌に見えて、実は何も起きていない人に向けた歌でもある。

「石を投げられても 道はつくれる」という一行は、最後まで残しました。投げられた石を使って道を敷く。彼の生き方にいちばん近い絵だと思ったからです。

歌詞

胸を張って 歩き出した その瞬間
後ろから飛んでくる とがった言葉の矢
気にするなって 言うほど 刺さるけど
振り返らずに わたしは前を見る

静かすぎる道は きっと止まってる証
ざわめく声こそ 進んでるサイン

叩かれてこそ 前に進んでる
批判の風は 背中を押す力
誰にも何にも 言われないなら
まだ何も 始めちゃいない
ヘイヤ ヘイヤ 声を上げて
ヘイヤ ヘイヤ 高く跳べ
嵐の中でこそ わたしは咲き誇る

立ち上がる者は いつだって嵐の中
正しさを叫べば 敵も生まれてくる
それでも彼は 一歩も引かなかった
恐れより誇りを 選んだその背中

俯く理由を 数えるその前に
顔を上げて 太陽を掴め

叩かれてこそ 前に進んでる
批判の風は 背中を押す力
誰にも何にも 言われないなら
まだ何も 始めちゃいない
ヘイヤ ヘイヤ 声を上げて
ヘイヤ ヘイヤ 高く跳べ
嵐の中でこそ わたしは咲き誇る

笑われた数だけ 強くなれる
石を投げられても 道はつくれる
ヘイターの声さえ ビートに変えて
さあ踊れ 怖がらずに
(Twende! さあ行こう!)

叩かれてこそ 前に進んでる
批判の風は 背中を押す力
誰にも何にも 言われないなら
まだ何も 始めちゃいない
ヘイヤ ヘイヤ 声を上げて
ヘイヤ ヘイヤ 高く跳べ
嵐の中でこそ わたしは咲き誇る
嵐の中でこそ わたしは咲き誇る

この言葉をもっと深く知る本

『マルコムX自伝』アレックス・ヘイリー

本人が語り、『ルーツ』の著者が聞き書きした自伝です。出版されたのは暗殺の年。少年期の貧困から、刑務所での独学、運動の中心に立つまでが本人の言葉で書かれています。批判されながら進んだ人が、その批判をどう受け取っていたかが分かります。

『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健

アドラー心理学を対話形式でまとめた本です。他人の評価をどう扱うか、という一点を徹底して掘ります。マルコムXの言葉を政治や運動から切り離して、自分の日常に落とすならこの一冊が近いです。

この本はAudibleでも聴けます。通勤・家事の「ながら時間」に読書を取り入れたい方は、まず無料体験から始めてみてください。 AmazonのオーディオブックAudible

『次は火だ』ジェイムズ・ボールドウィン

同じ時代に、同じ問題を、まったく違う温度で書いた作家の本です。マルコムXが演説で叫んだことを、ボールドウィンは手紙の文体で書いています。並べて読むと、怒りにもいろいろな形があることが分かります。

もう一度、この言葉を

もし君を批判する者がいないなら、君はおそらく成功しないだろう
——マルコムX

読む前は、叩かれた人を励ます言葉に見えていたかもしれません。読んだあとなら、もう半分が見えていると思います。批判されていないということは、まだ誰のところにも届いていないということ。

言われて凹んだ夜のことは、たぶん覚えています。何も言われなかった夜のことは、覚えてすらいないかもしれません。

言われて凹んだことと、何も言われなくて凹んだこと。どちらが長く残っていますか。

【偉人の言葉】「叩かれてこそ」04


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