トレーラー紹介
レビュー
*原則ネタバレを含まないようにレビューしていますが、ストーリーの流れや一部分の内容、撮影手法などへの言及を含むことがありますので、情報を入れずに観たいという方は、鑑賞後にお読みください。
冒頭からノリノリのミュージカル映画です。以前に紹介した『ハイスクール・ミュージカル』同様に、ミュージカル映画は心が躍ります。『グレイテスト・ショーマン』はミュージカル映画を観たことがない人にもお薦めできる一作です。
幼い頃から貧しかったバーナムは、良家の令嬢チャリティと結婚する。勤めていた貿易会社が倒産するが、娘の一言からショービジネスに乗り出すことになる。ショーは大盛況を博すが、批評家には酷評され、一流階級からはバーナムは成り上がりのペテン師とも言われることになります。
バーナムはヴィクトリア女王に拝謁する機会を得たことから、欧州一のオペラ歌手ジェニー・リンドと手を組み、全米での講演に展開していくことになる。しかし、バーナムがジェニーと全米ツアーを敢行しているうちに、劇場の人気は落ちていき、妻チャリティの気持ちも離れていく。全米ツアーから戻ったバーナムを待ち受けていたのは、劇場の火災崩壊だった・・・。
ミュージカル映画の典型的なストーリーテンポの速さ、起承転結がしっかりしています。なので単純にストーリーの流れに沿ってミュージカルを楽しむことができます。
批評家からこの映画への評価はそこまで良いわけではありませんでしたが、観客側からは好評で口コミで再興しています。ミュージカル映画の作りとしては至って典型的ですし、社会風刺的な面もあるため評価が分かれたのでしょうか?観客側としては、使われる曲はよく知られた曲ばかりですし、主人公バーナムの夢を追いかける姿やサーカス舞台も相まって前向きになれる評価であったことは間違いありません。
唯一、ミュージカル映画を観るときは、スマホよりも家のテレビ、テレビよりも劇場で観ることをお薦めします。
映画の背景を読む
(1)この映画のサウンドトラックはある?
このサウンドトラックは、全世界で累計830万枚以上の売上を記録しています。収録曲は以下の通り。
2. ア・ミリオン・ドリームズ / ジヴ・ザイフマン、ヒュー・ジャックマン、ミシェル・ウィリアムズ
3. ア・ミリオン・ドリームズ(リプライズ) / オースティン・ジョンソン、キャメロン・シーリー、ヒュー・ジャックマン
4. カム・アライヴ / ヒュー・ジャックマン、キアラ・セトル、ダニエル・エバーリッジ、ゼンデイヤ & ザ・グレイテスト・ショーマン・アンサンブル
5. ジ・アザー・サイド / ヒュー・ジャックマン & ザック・エフロン
6. ネヴァー・イナフ / ローレン・オルレッド
7. ディス・イズ・ミー / キアラ・セトル & ザ・グレイテスト・ショーマン・アンサンブル
8. リライト・ザ・スターズ / ザック・エフロン & ゼンデイヤ
9. タイトロープ / ミシェル・ウィリアムズ
10. ネヴァー・イナフ(リプライズ) / ローレン・オルレッド
11. フロム・ナウ・オン / ヒュー・ジャックマン & ザ・グレイテスト・ショーマン・アンサンブル
(2)P・T・バーナムとそのサーカスについて
P・T・バーナム(フィニアス・テイラー・バーナム、1810-1891)は、アメリカ合衆国の興行師。立ち上げたサーカスは、後のリングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス(1919-2017)です。彼はLIFE誌が1999年に選ぶ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」でアメリカ人とされる人物22人の中に選ばれています。
サーカスは動物愛護団体が動物の芸について批判を強め、経営が成り立たなくなったことから2017年に解散。しかし2023年、動物をパフォーマンスに用いずにツアーを再開し、現在も続いています。
(3)髭女の存在について
顔に毛がたっぷりある女性は少ないですが、ホルモンのバランスが崩れていたり、稀少な遺伝的障害により女性に髭がはえることもあります。著名な髭女は13世紀ごろから存在しています。
(4)サーカス団員の特徴
髭女の他にも以下のような特徴のある団員がいます。フォーカスされない団員もいますが、一人ひとりが社会から隠れていて虐げられる経験をした背景があります。もう一度、誰が誰か意識して観てみてもよいでしょう。
(5)フィリップを演じるザック・エフロンについて
『ハイスクール・ミュージカル』シリーズで有名なザック・エフロンが、P・T・バーナムのパートナー、フィリップ・カーライルを演じています。
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『ハイスクール・ミュージカル』もおすすめ映画なので、合わせて観てください。
この映画を観て学べること
この映画は、19世紀の物語でありながら、現代社会が直面する多様性、包括性、自己受容、創造性、リーダーシップといった課題に対する普遍的な示唆を与えてくれる作品といえます。特に、自分らしさを大切にしながら他者とのつながりを築いていく生き方について、多くの学びを得ることができます。
主人公P.T.バーナムが貧しい出自から成功を掴むまでの物語は、どんな困難な状況にあっても夢を諦めない姿勢の重要性を教えてくれます。「夢は叶う」という単純なメッセージではなく、夢の実現には継続的な努力と創意工夫が必要であることを示しています。
また、サーカスに集まる「異端者」たちを通じて、社会から排除された人々にも居場所と尊厳があることを描いています。外見や能力の違いを「欠点」ではなく「個性」として捉え、多様性を力に変える現代のダイバーシティ&インクルージョンの考え方を先取りしています。19世紀アメリカの社会的偏見に立ち向かう登場人物たちの姿を通じて、既存の価値観や社会通念に疑問を持つ勇気の重要性を描いています。現代でも残る様々な差別や偏見に対して、個人レベルでできることを考えさせられます。
「This Is Me」という楽曲に象徴されるように、自分らしさを受け入れ、他者の評価に左右されない強さを持つことの大切さを教えています。SNS時代の現代において、他者との比較に苦しむ人々にとって重要なメッセージです。
さらに、サーカス団を率いるバーナムの姿から、リーダーとしての責任感と、メンバーそれぞれの個性を活かすマネジメント能力の重要性を学べます。多様なメンバーをまとめ上げる現代のチームビルディングにも応用できる教訓があります。事業の失敗や人間関係の破綻を経験したバーナムが、それらから学んで再起する過程は、現代社会における失敗への向き合い方や回復力(レジリエンス)の重要性を教えています。
そして、単なる経済的成功や社会的地位の獲得ではなく、自分らしさを貫き、周囲の人々を幸せにすることが真の成功であるという価値観を提示しています。現代の成功至上主義社会に対する一つの答えを示しています。
この映画を観た後に読みたい本
自己受容・自己肯定感に関する書籍
『自己肯定感の教科書』(中島輝著)では、心理カウンセラーによる実践的な自己肯定感向上の方法論。映画で描かれる「ありのままの自分」を受け入れる心理的プロセスが具体的に解説されています。
『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著)は、アドラー心理学の名著。他人の評価に左右されず、自分らしく生きることの重要性を哲学的に探求した現代の古典です。
多様性・インクルージョンに関する書籍
『多様性の科学』(マシュー・サイド著)では、異なる背景を持つ人々が集まることで生まれる創造性と革新について、科学的根拠とともに解説。サーカス団のような多様なコミュニティの価値を理解できます。
『インクルージョン思考』(石田章洋著)は、日本社会における包摂的思考の重要性を説く書籍。映画の「誰も排除しない」というメッセージと共通するテーマです。
夢の実現・起業家精神に関する書籍
『夢をかなえるゾウ』(水野敬也著)は、ユニークな自己啓発小説として人気です。大きな夢に向かって行動することの大切さを、親しみやすい形で学べます。
エンターテインメント・ショービジネスに関する書籍
『ディズニーの魔法』(有馬哲夫著)世界最高のエンターテインメント企業の哲学と経営手法。「夢と魔法の王国」を支える思想は、バーナムの理念と重なります。
アメリカ史に関する書籍
『アメリカ史研究入門』(有賀夏紀著)は、19世紀アメリカの社会情勢と文化を理解するための基本書。映画の時代背景をより深く理解できます。
家族・人間関係に関する書籍
『家族という病』(下重暁子著)では、現代の家族関係を見直す視点を提供。仕事と家族のバランスについて考えるきっかけになります。
『人を動かす』(デール・カーネギー著)は、人間関係の古典的名著。バーナムのような人を惹きつける魅力の源泉を学べます。
基本情報
原題:The Greatest Showman
ジャンル:ミュージカル、ドラマ
公開:2017年(アメリカ)2018年(日本)
時間:1時間45分
監督:マイケル・グレイシー
出演:ヒュー・ジャックマン、ザック・エフロン、ミシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン
最も崇高な芸術とは人を幸せにすることだ
P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)
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