第18回【邦画】燃えよ剣「時代の脇役が燃やした信念の物語」|新選組副長・土方歳三の生涯を描く歴史スペクタクル

燃えよ剣
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トレーラー紹介

出典:Youtube:映画『燃えよ剣』新予告映像(90秒)10月15日(金)公開!
https://www.youtube.com/watch?v=1EgEPDTT43U
Asmik Ace

激動の幕末を舞台に、新選組副長・土方歳三の生涯を描いた歴史スペクタクル大作『燃えよ剣』。時代の脇役でありながら、己の信念を貫き通した男たちの姿は、現代を生きる私たちに多くの示唆を与えてくれます。

豪華キャストによる熱演、迫力の殺陣シーン、原田眞人監督の重厚な演出が光る本作は、時代劇ファンはもちろん、歴史に興味のある方、そして人生における信念の大切さを考えたい方すべてにおすすめしたい作品です。

Amazon Prime Videoで視聴できますので、ぜひこの機会にご覧ください。

レビュー

*原則ネタバレを含まないようにレビューしていますが、ストーリーの流れや一部分の内容、撮影手法などへの言及を含むことがありますので、情報を入れずに観たいという方は、鑑賞後にお読みください。

門鳥が中学生の頃、学校の図書館で『燃えよ剣』(司馬遼太郎著)をふと手に取り、食い入るように読みました。「司馬遼太郎先生はこの時代に生きておられたのか?」と思うほど描写表現が鮮明で、土方歳三はじめ新選組の魅力に取り憑かれていました。しかし、歴史を学んでいくうちに坂本龍馬が現れ、明治維新のその先を知ると、国を変えていこうという人物の方を好きになってしまいましたが…。

燃えよ剣01

司馬遼太郎の傑作小説を原田眞人監督が映画化した本作は、新選組副長・土方歳三の生涯を通じて、激動の幕末を生きた男たちの「信念」を描き出す壮大な歴史スペクタクルです。

本作の最大の魅力は、「脇役」という視点から歴史を切り取っている点にあります。土方歳三は新選組の「副長」というサブポジションにあり、新選組自体も幕府側の末端組織でした。そして幕府側は新時代を迎えるにあたり錦の御旗を持たない「脇役」でした。しかし、本作はその脇役たる土方を主役に据えることで、時代の波に翻弄されながらも己の信念を貫いた男たちの姿を画面いっぱいに溢れさせています

2時間半近い上映時間で幕末という膨大な時代を描くため、ダイジェスト的な構成は避けられません。しかし本作では、戊辰戦争末期の土方が回想する形式を取ることで、省略の合間にさまざまなドラマの残り香を感じられる工夫がされています。岡田准一が土方のお国言葉で喋ることで、説明的になりすぎず、人となりを感じさせる効果的なシーンとなっています。

演者陣の熱演も見どころのひとつです。岡田准一の身体能力を活かした本格的な殺陣はもちろん、鈴木亮平の近藤勇、山田涼介の沖田総司、伊藤英明の芹沢鴨など、豪華キャストが気迫のこもった演技で応えています。特筆すべきは、ウーマンラッシュアワー村本の山崎烝や、はんにゃ金田の藤堂平助が、単なるコメディリリーフではなく世界観の中に溶け込んでいる点です。キャスティングの妙を感じさせる采配と言えます。

アクションシーンにも十分な尺が割かれており、土方VS芹沢、土方VS以蔵、池田屋事件など、見せ場をしっかりと堪能できます。時代考証とは関係のない近藤勇のダンスシーンなど、遊び心のある演出も映画の楽しさに直結しています。

原田眞人監督は「日本のいちばん長い日」「関ヶ原」と壮大で重厚な歴史群像劇を手がけてきました。時代劇が斜陽化しつつある中、先達が築き継承してきた時代劇の伝統を終わらせてなるものかという覚悟や使命感が本作からも伝わってきます。

本作は原作ファンや歴史好き、司馬遼太郎ファンがピンとくるような小ネタの散りばめ方が上手く、基本的には長編小説『燃えよ剣』を踏襲しながらも、短編集『新選組血風録』や別の短編の要素を取り入れることで、脇キャラにもそれぞれドラマがあることが伝わってきます。

もともとこの題材に興味がない人には説明不足に映るかもしれませんが、鑑賞後に興味を持って原作を読んだり、当時の歴史を調べたりするきっかけとなる作品です。時代の波に飲まれながらも、剣に生き、信念を燃やして散っていった男たちの姿に、現代を生きる私たちも多くを学べるはずです。

映画の背景を読む

(1)新選組とは?

新選組は幕末の京都において、会津藩主・松平容保のもとで治安維持を図るべく結成された組織です。当時の京都では尊王攘夷派の浪士たちによる乱暴行為が頻発していました。新選組は京都守護職の下、市中を警護し、過激派の取り締まりを行いました。

動乱の幕末でわずか6年だけ存在した組織でしたが、池田屋事件をはじめとする数々の戦いで名を馳せ、歴史に深く刻まれる存在となりました。

戊辰戦争
出典:中高生のための幕末・明治の日本の歴史辞典(戊辰戦争関連地図)
https://www.kodomo.go.jp/yareki/theme/theme_06.html

(2)新選組三傑の愛刀

土方歳三の愛刀「和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)」

本作では、土方歳三の愛刀として知られる「和泉守兼定」が登場します。会津の名工・和泉守兼定(11代目)が打った刀で、土方が最期まで手放さなかった一振りです。刃長は約70cm。「兼定」は会津を代表する刀工の名跡で、幕末の動乱期に会津藩とともに戦った土方がこの刀を愛用したことは象徴的です。函館戦争で戦死した際も、この刀を腰に差していたと伝えられています。

土方歳三
出典:中高生のための幕末・明治の日本の歴史辞典(土方歳三)
https://www.kodomo.go.jp/yareki/person/person_23.html

近藤勇の愛刀「長曽祢虎徹(ながそねこてつ)」

新選組局長・近藤勇が愛用したとされるのが「長曽祢虎徹」です。江戸時代初期の名工・長曽祢興里入道虎徹が打った刀として知られ、「虎徹」は業物(よくきれる刀)として名高い銘でした。ただし、近藤が所持していたのは真作ではなく贋作(偽物)だったという説が有力です。それでも近藤は真作だと信じて愛用し続けました。真贋に関わらず、刀に対する信念を持ち続けた近藤の人柄が垣間見えるエピソードです。

近藤勇
出典:中高生のための幕末・明治の日本の歴史辞典(近藤勇)
https://www.kodomo.go.jp/yareki/person/person_13.html

沖田総司の愛刀「菊一文字則宗(きくいちもんじのりむね)」

新選組一番隊組長・沖田総司の愛刀として伝えられているのが「菊一文字則宗」です。鎌倉時代の備前国(現在の岡山県)の刀工・則宗による名刀で、茎(なかご=刀の持ち手部分)に菊の紋様が刻まれていることからこの名があります。ただし、これも史実としては疑問視されており、実際には「加州清光(かしゅうきよみつ)」や「大和守安定(やまとのかみやすさだ)」を使用していたという説が有力です。それでも、天才剣士・沖田総司の愛刀として「菊一文字」のイメージは広く定着しています。

映画のタイトル通り、本作では迫力ある殺陣シーンが数多く登場し、刀剣が欠かせない存在となっています。刀剣ファンにとっても見どころの多い作品です。

(3)司馬遼太郎という作家

原作者の司馬遼太郎(1923-1996)は、日本を代表する歴史小説家です。本名は福田定一。「司馬遷に遼か(はるか)に及ばない日本の者(=太郎)」という謙遜から筆名を付けたとされています。

『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『国盗り物語』など数多くの歴史小説を著し、日本人の歴史観に大きな影響を与えました。『燃えよ剣』は1962年から1964年まで『週刊文春』に連載され、500万部を超えるベストセラーとなりました。

(4)1966年版『燃えよ剣』との違い

『燃えよ剣』は1966年にも映画化されていますが、内容は大きく異なります。1966年版は土方と七里研之助、佐絵を巡る恋愛要素を中心に再構成されていました。

2021年版は原作により忠実で、土方の生涯全体を描く構成となっています。ただし、原作にあった「男色」の要素は映画では省かれており、幅広い層の観客を意識した作りになっています。

燃えよ剣03

(5)『燃えよ剣』はどこで観れる?

劇場公開は2021年10月15日でした。Amazon Prime Videoで見放題独占配信されています(2025年11月16日現在)。また、時代劇専門チャンネルでも定期的に放送されています。

この映画を観て学べること

本作は、「脇役」という立場にありながら、信念を貫き通すことの尊さを教えてくれます。

時代の大きな流れの中で、自分がどれだけ小さな存在であったとしても、己の信念と矜持を持って生きることの価値を示しています。土方歳三をはじめとする新選組の面々は、最終的には歴史の敗者となりましたが、その生き様は後世に深い感銘を与え続けています。

また、組織におけるリーダーシップの在り方も学べます。土方は「鬼の副長」と呼ばれ、厳格な法度で組織を統率しました。時には冷酷とも思える決断を下しながらも、組織全体のために最善を尽くす姿勢は、現代のビジネスシーンにも通じるものがあります。

さらに、激動の時代における決断の重さも描かれています。幕末という転換期において、佐幕か倒幕か、どちらの道を選ぶかは人生を大きく左右する選択でした。私たちも日々、大小様々な選択を迫られますが、その選択に真摯に向き合い、後悔のない決断をすることの大切さを本作は教えてくれます。

燃えよ剣02

この映画を観た後に読みたい本

歴史小説

『燃えよ剣』(司馬遼太郎著) は、もちろん映画の原作として必読です。映画では描ききれなかった詳細なエピソードや心理描写が楽しめます。

『新選組血風録』(司馬遼太郎著) は、新選組隊士たちの短編集です。映画でも一部のエピソードが取り入れられており、より深く新選組を知ることができます。

『竜馬がゆく』(司馬遼太郎著) では、倒幕側の視点から幕末を描いています。『燃えよ剣』と合わせて読むことで、幕末という時代を多面的に理解できます。全八巻です。

リーダーシップと組織論に関する書籍

『リーダーの仮面』(安藤広大著) では、組織を率いるリーダーとしての在り方について論じています。土方の厳格なリーダーシップと比較しながら読むと興味深いでしょう。

『失敗の本質』(戸部良一ほか著) は、日本軍の組織的失敗を分析した名著です。幕府側の敗北と重ね合わせて考察すると、組織の在り方について深く学べます。

時代の転換期と個人に関する書籍

『武士道』(新渡戸稲造著) では、武士の精神性について論じています。新選組の面々が体現した武士の矜持を理解する上で参考になります。

『生き方』(稲盛和夫著) では、現代における生き方の指針が示されています。時代は違えど、信念を持って生きることの大切さは不変です。

新選組に関する書籍(漫画)

新選組ならぬ「真選組」が登場。山崎丞が山崎退になるなど一捻りある設定で、ギャグ要素が強いながらも真面目なシーンとのギャップが魅力です。

明治時代を舞台に、かつて幕末の動乱期に長州藩の「人斬り抜刀斎」として恐れられた緋村剣心が、明治維新後は不殺(ころさず)の誓いを立て、流浪人として生きる物語です。新選組は幕府が組織した剣客集団で、剣心が実質的に所属していた討幕の長州方とは敵同士です。

市村鉄之助を主人公とした作品で、アニメ、ドラマ、舞台化もされた人気作です。

1997年から2020年まで23年にわたって連載され、第48回小学館漫画賞を受賞。女性が男性に成りすまして新選組に入隊する物語です。

1963年に「少年ブック」で連載。司馬遼太郎の「燃えよ剣」とほぼ同時期の作品です。

基本情報

原作:司馬遼太郎『燃えよ剣』(新潮文庫刊 / 文藝春秋刊)
ジャンル:時代劇、歴史、アクション
公開:2021年
時間:148分(2時間28分)
監督:原田眞人
出演:岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、伊藤英明、尾上右近、山田裕貴、髙嶋政宏、柄本明、市村正親

コトバのチカラ

勝つためには策が要る。

策をたてるためには

偵察が十分でなければならない。

喧嘩の常法ですよ。

土方歳三


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