
メタ認知とは「自分自身が考えていることや感じていることを客観的に把握すること」です。Facebookを運営するMeta社や、最近よく耳にする「メタバース」のメタのことで「より高次の」や「超越」を意味します。今回はメタ認知がなぜ重要なのか、メタ認知をできることの大切さを学びましょう。
・相手の立場になって考えることの大切さを教えたい人
・相手のことが理解できなくて困っている人
・自分の力を過大評価してしまう人
(推奨人数:2人以上)
①2人1組になり、1人が頭の中で有名な曲を思い浮かべる。
②その人はその曲のリズムでテーブルを叩き、それを聴いたもう1人は曲名を当てる。
③役割を交代して再度チャレンジしてみる。
④3回ほど繰り返し、何回正解できたか振り返る。
⑤お互いに正答率の予想と結果がどう違ったか発表する。
1.ポイント:他者の立場から物事を見る困難さを知る
曲を思い浮かべてテーブルを叩いた人にとっては簡単に思えることであっても、そうでない人には、曲を知っていたとしても、リズムと結びつけることは難しいものです。
自分が知っていることは当然他者も知っているだろうと思い込むと、知識や情報を持たない人の立場から物事を考えることができなくなってしまいます。
最近は電子マネーの普及により「お釣り」を知らない子供が増えているようです。それだけでなく大人が当たり前のように使っている言葉の概念を子供が知らないということはよくあることでしょう。今はむしろ子供が知っている言葉の概念を大人が知らないという方が多いかもしれませんね。

知識は個人や世代の間で大きく異なります。まずは「やってみよう!」を通じて、他者の立場から物事を見る難しさを知ることで、なぜそういうことが起きるのか考えるきっかけになるでしょう。
2.必要な準備
誰もが知っている有名で、自分自身も好きな曲を何曲か考えてきてもらう。
なし
3.参考例:1対多でやってみよう
自分が当然と思っていても、必ず他者に当てはまるとは限りません。今回の「やってみよう!」は1対1でやっていますが、1対多でやることも効果的です。
②順番にリズムを叩く役になり、他の人全員はその曲名を当てる。
③全員で一巡し、何人正解を出せたか確認する。
④全員それぞれ正答率の予想と結果がどう違ったか発表する。

有名な曲とはいえ、そもそもその曲を相手が知らなければ「やってみよう!」の意味がありませんので、大勢でやれば誰も知らないということはないでしょう。もし、選曲に不安があるようであれば、ファシリテーターが曲のリストをあらかじめ作っておき、回答者が見えないように後ろでリズムを叩く役に伝えてあげる形でもよいです。
4.まとめ:知識と経験でメタ認知を身につける
自分自身を一段上から客観視するもう1人の自分を持つために、まずは今回の「やってみよう!」を通じて、自分自身と他者との知識が違うことを認識しましょう。その認識が「無意識の差別」や「他者との摩擦」など、良くないことを引き起こす要因を軽減してくれます。
また、知識不足や経験不足により、自分自身の能力を過大評価してしまうことも研究で分かっており、これを「ダニング=クルーガー効果」と呼びます。外界を知らない「井の中の蛙」状態であれば、その知識不足と未熟さから自分の能力不足やその程度を正確に認識できないのです。
自分自身で何か成し遂げたいことがあっても、自分自身が未熟であることや能力が足りないということを知るのはとても辛いことです。しかし、何かを本気ででそれを成し遂げたいと思うのであれば、思い切って広い世界に飛び出してみることが達成への第一歩であることを忘れてはいけません。今第一線で活躍しているアーティストなど、誰しも1日で大成したわけではなく、聞きたくない声や思い出したくない過去の1つや2つは当たり前に持っていることを理解し、勇気を出して広い世界に飛び込んでみましょう。
この記事を探求できるおすすめ書籍5選
『メタ認知―あなたの頭はもっとよくなる』三宮真智子
大阪大学名誉教授による、認知心理学と教育心理学の専門家が指南するメタ認知の入門書です。この記事では「メタ認知とは自分自身が考えていることや感じていることを客観的に把握すること」と定義していますが、この本では「もうひとりの自分」というわかりやすい表現で、冷静で客観的な判断をしてくれる自分の頭の使い方を解説しています。特にこの記事で伝えている「どうせできない」といったメンタルブロックや、いつも繰り返してしまう過ち、考え方のクセを克服する方法が具体的に示されており、メタ認知で頭を上手に使う、気持ちを整える、やる気を出す、そしてメタ認知を育てる方法が5章にわたって丁寧に解説されています。この記事のワークショップで学んだ「他者の立場から物事を見る困難さを知る」ことを、より深く理解できる一冊です。『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める 認知心理学が解き明かす効果的学習法』三宮真智子
同じく三宮真智子氏による、より実践的なメタ認知の活用書です。この記事では「知識と経験でメタ認知を身につける」というメッセージがありますが、この本では第1部でメタ認知を理解するための20のトピック、第2部で99のトピックを通じてメタ認知的知識を学習と教育に活かす具体的な方法が解説されています。特に「睡眠中にも学習は進む」「コンセプトマップを描くことが理解・記憶を促す」など、日常生活に活かせる実践的な知識が満載です。この記事で紹介している「曲を思い浮かべてテーブルを叩く」ワークショップのような、他者の立場を理解するトレーニングを、より体系的に学べる内容になっています。『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』西剛志
脳科学者による、認知バイアスを脳科学的観点からわかりやすく解説した一冊です。この記事では「ダニング=クルーガー効果」という認知バイアスを取り上げていますが、この本では49の認知バイアスを7つの時限(五大バイアス、人間関係、感情、仕事、お金、健康、社会現象)に分けて詳しく解説しています。特に「実力ない人ほどあの人そうでもないと言うワケ(ダニング・クルーガー効果)」という章では、この記事で伝えている「知識不足や経験不足により、自分自身の能力を過大評価してしまう」メカニズムが脳科学的に説明されています。認知バイアスを知ることで、この記事のメッセージである「無意識の差別や他者との摩擦など、良くないことを引き起こす要因を軽減」する方法を学べます。『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』池谷裕二
東京大学教授の脳研究者による、認知バイアスについての初心者向け解説書です。この記事では「自分自身と他者との知識が違うことを認識する」重要性を伝えていますが、この本では「人は自分のクセに無自覚であるという事実に無自覚です。他人のクセには容易に気づくことができても、案外と、自分自身のクセに気づかないまま自信満々に生きているもの」という洞察から、様々な認知バイアスを解説しています。おとり効果、確証バイアス、ハロー効果など、日常生活で陥りやすい心理のクセを知ることで、この記事で提案している「客観的に自分を見る」能力を高めることができます。心の辞書として活用できる実践的な内容です。『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』情報文化研究所
この記事の参考文献として挙げている書籍そのものです!60の認知バイアスを体系的にまとめた事典形式の一冊で、この記事で伝えている「自分が知っていることは当然他者も知っているだろうと思い込む」といった様々なバイアスを網羅的に学べます。特にダニング=クルーガー効果をはじめとする自己認識に関わるバイアス、確証バイアス、アンカリング効果など、日常生活やビジネスシーンで遭遇する認知の歪みが詳しく解説されています。この記事で引用しているソクラテスの「知識についての自己認識こそ真の力である」という言葉の実践版として、自分自身の思考のクセを知り、より正確な判断をするためのガイドになります。参考文献
情報文化研究所『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』フォレスト出版、2021年
知識は力だが、知識についての自己認識こそ真の力である。
ソクラテス

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