
アメリカの子ども達の職業体験プログラムとして生まれたシャドウイングというものがあります。その名の通り、仕事をする人の「影」となり観察に徹することで学びを得ることを目的とするものです。
・成績が伸び悩んでいる人
・優秀な人のやり方を知りたい人
・組織に優秀な人材を増やしたい人
①一日有給休暇をとってみる。
②社内で優秀だと言われている人にシャドウイングを申し込む。
③その人が何をどう「システム化」しているか盗んでみる。
④終わったらきちんと感謝する。
1.ポイント:シャドウイングをしよう
アメリカのビジネススクールなどには「シャドウイング」という教育プログラムがあります。これは経営者のそばに付き添わせてもらい、その日常を一緒に体験することにより、経営やマネジメントを学ぶというものです。
日本でも中学校や高校のキャリア教育の一環として採用されることもあります。こちらは実際の就労を身近で観察させることで、将来の就業意欲を持たせる効果を期待しています。
シャドウイングのポイントは、仕事をすることではなく、観察に徹することです。仕事をしてしまうと覚えることやコミュニケーションで違う頭を使うことになってしまい、見て学ぶことに集中できなくなります。
見て気づかせるプログラムとして組織の中に導入してみましょう。
2.必要な準備
・有給休暇を申請しておくこと
・優秀な人に1日同行をお願いしておくこと
・学びを記録しておくもの(メモやスマホなど)
3.参考例:優秀な人に申し込む
会社に入って新人の時は右も左も分からないため、先輩に同行して営業先に行ったり、社内で事務処理を教えてもらったりしますよね。そして仕事を覚えてきたら同行もなくなり、一人で仕事を完結できるようになります。
ところが、仕事ができた気になっていると、営業成績が落ち込んだ時や仕事がうまくいかないときに、上司や先輩に頼めず一人でなんとかしないといけないと思ってしまいますが、そんなときこそこのシャドウイングを身近な優秀な人に申し込んでみましょう!
慣れてきてからの営業同行は、新人の時のそれとは違い、新しい視点でたくさんの学びがあるに違いありません。
4.まとめ
システム化するということは、誰がやっても何も考えずに同じように正確にできることです。そしてシステム化ができてはじめて、組織は利益を継続的に生み出しはじめることができるのです。
つまり、優秀な人材に依存した組織は、その人材がいなくなったら成り立たなくなるため、優秀な人の分身を常に作っていかなくてはなりません。それは見に見える形でマニュアル化できるものもあれば、目に見えず言葉にも表しにくいスキルやテクニックもあります。シャドウイングを導入し、優秀な人材の近くで少しでも学ばせることが人材の成長と組織全体の利益につながることになるでしょう。
組織として積極的にシャドウイングをさせる仕組みを考えてみてもいいかもしれませんね。
この記事を探求できるおすすめ書籍5選
『トヨタの育て方』OJTソリューションズ
元トヨタマンたちが体験してきたエピソードを通じ、問題解決や改善といった人材育成につながるメソッドが紹介されている一冊。この記事のテーマである「シャドウイング」を、トヨタ式OJT(On-the-Job Training)として体系的に学べます。この記事で触れている「優秀な人のやり方を知りたい」「仕事のシステム化を観察する」というアプローチを、トヨタという世界的企業の実践例から深く理解できます。「見て学ぶ」「真似る」ことの重要性を、豊富な事例とともに解説。この記事の「優秀な人の分身を常に作っていかなくてはなりません」というメッセージを実現する具体的な方法が満載です。『これだけ!OJT』中尾ゆうすけ
7刷りのロングセラー。この記事のテーマである「シャドウイングを導入しよう」を、OJTの実践手法として学べる決定版です。本書の特徴は「仕事をすることではなく、観察に徹する」というこの記事のメッセージを、「見せる→やらせる→フォローする」という3ステップで体系化している点。この記事で触れている「優秀な人に同行して学ぶ」というアプローチを、新人教育だけでなく中堅社員の再教育にも応用できる実践的な内容です。「目に見えず言葉にも表しにくいスキルやテクニック」をどう伝えるかというこの記事の課題に対する解決策が満載です。『マネジメント[エッセンシャル版] 基本と原則』P・F・ドラッカー
この記事で触れている「システム化」「組織に優秀な人材を増やす」を、マネジメントの視点から深く理解できる名著。本書の核心は「組織は個人の強みを生産性に変えるための道具である」という思想で、この記事の「優秀な人材に依存した組織は、その人材がいなくなったら成り立たなくなる」という課題への解決策を提示します。この記事のテーマである「シャドウイング」は、ドラッカーが説く「人を活かす」「強みを引き出す」というマネジメントの実践例そのもの。組織として優秀な人材を増やすための理論的支柱となる必読書です。『人を動かす 改訂文庫版』デール・カーネギー
邦訳500万部突破の歴史的ベストセラー。この記事のテーマである「優秀な人に同行して学ぶ」を、人間関係の原則から理解できる不朽の名著です。この記事で触れている「終わったらきちんと感謝する」「優秀な人に1日同行をお願いしておくこと」というプロセスを、人間関係の基本として学べます。特に「人に好かれる六原則」の中で「誠実な関心を寄せる」「聞き手にまわる」という原則は、この記事の「見て学ぶ」「観察に徹する」という姿勢の人間関係における基礎となります。シャドウイングを成功させるためのコミュニケーションの本質が学べる一冊です。『リーダーの仮面 ──「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』安藤広大
シリーズ累計178万部突破の大ベストセラー。この記事のテーマである「組織に優秀な人材を増やす」を、マネジャーの視点から学べる一冊です。本書の核心は「仕事をルールとして教える」という考え方で、この記事で触れている「システム化するということは、誰がやっても何も考えずに同じように正確にできること」というメッセージと一致します。この記事の「優秀な人の分身を常に作る」ためには、優秀な人の仕事を「再現可能なルール」として抽出する必要があり、その方法論が本書で詳しく解説されています。シャドウイングで学んだことを組織に定着させるための実践書です。参考文献
内海勝統『出会う人みな、仕事の先生』サンマーク出版、2002年
成功体験がまだないという人は、自分は成功できないと諦めるのではなく、自分のやり方が悪いのかもしれないのだと考えて、やり方を変えてみるべきだ。まわりに成功している人がいたら、その人のノウハウを一つでも真似しよう。成功している人には必ず何かノウハウがあるはずだ。真似をすることは決して悪いことではない。成功体験は人を変える。だから人の真似をしてでも成功すべきだ。
和田秀樹(精神科医・評論家)

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