何か学習を始めようとするとき、その学習期間が長ければ長いほど、モチベーションの維持が難しくなります。今回紹介するモチベーションの4つの要素を踏まえ、学習プログラムを作ることで効果的な学びを得ることができます。
・モチベーションを維持して勉強したい人
・学習がいつも長続きしない人
・教育担当者やトレーニングを開発する人
(推奨人数:3人以上)
①自分が学習したいトピックを一つ、紙に書く。
②全員書き終わったらその紙を右隣の人に渡す。
③「4つの要素」を意識しながら、そのトピックをどのように効果的に学べるか簡単な学習プログラムを開発してみる。
④みんな終わったらそれぞれを発表する。
1.ポイント:ARCSモデルとは
人が学習を始めて学習を終えるまでに必要な要素とは次の4つです。
①注意喚起(Attention)
②関連性(Relevance)
③自信(Confidence)
④満足感(Satisfaction)
この4要素を学習する側から言い換えると、このようになります。
①ちょっと気になる
②自分に役に立ちそうだ
③自分にもやればできそうだ
④やってよかった
何かの学習プログラムを作るときには、これら4つのステージが意識的に作られているかチェックしてみましょう。
ちなみに、このモデルは「ARCS(アークス)モデル」と言われます。教育心理学者のジョン・ケラーが1983年に提唱した学習意欲向上モデルです。ぜひフレームワークの一つに取り入れましょう。
2.必要な準備
今学んでいること、これから学びたいと思っているトピックを1つ考えてきてもらう。なければ、過去に学んだけれどうまくいかなかったトピックでもよい。
・ノート(A4用紙可)
・ペン
3.具体例:ARCSの具体例
3ー1.注意喚起(Attention)
「ちょっと気になる」「面白そう」という興味や知的好奇心、探究心を刺激します。
・ 知覚的喚起:興味関心を引き出すこと
・ 探究心の喚起:行動を変える気持ちや好奇心を刺激すること
・ 変化性:興味関心、注意を維持すること
3ー2.関連性(Relevance)
学ぶ内容に対する相手との関連性に、「親しみ」や「役に立ちそう」という意義を持たせます。
・ 親しみやすさ:学ぶ内容を相手の経験に結びつけること
・ 目的指向性:学ぶ内容と相手の目的を結びつけること
・ 動機との一致:学びのスタイルと興味を結びつけること
3ー3.自信(Confidence)
学ぶ過程で成功体験を実感させ、その成功が自分の能力や努力によるものだと思わせることで「やればできる」という自信につなげます。
・ 学習欲求:ゴールを明示し「やればできそう」という期待感を抱かせること
・ 成功の機会:成功体験のステップを通して自信につなげること
・ コントロールの個人化:成功体験は自分の努力と能力によるものだと認識すること
3ー4.満足感(Satisfaction)
学ぶ過程で得た知識や情報・技能などの有効性を実感させることで「やってよかった」という満足感を与え、新たな学びに向けた意欲を引き出します。
・ 内発的な強化:相手の興味・関心をさらに向上させること
・ 外発的報酬:相手の行動成功に対し、称賛や報酬を提供すること
・ 公平さ:首尾一貫した公平間のある環境で、学びの価値を実感させること
4.まとめ
学習意欲を向上させるために、アークスモデルをもとにポイントを押さえながら学習プログラムを作ってみましょう。一人では挫折してしまうことも、仲間と協力することや共に作り上げることで、さらに学習意欲が高まるはずです。
このモデルは、学びたい人だけでなく、教える(伝える)人も頭に入れておくことでより効果的な学習の場を作ることができます。これだけ教えているのに学習者の身になっていない、成果が表れていないと感じるのであれば、教える前に今回のポイントを押さえながら効果的な学習プログラムになっているかどうか確認してみましょう。
参考文献
アンドリュー・スミス・ルイス『最強の記憶術 Learn Faster, Remember Longer !』日経BP、2003年
日本教育工学会『教育工学事典』実教出版、2000年
天才?そんなものは決してない。ただ勉強です。方法です。不断に計画しているということです。
オーギュスト・ロダン
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